食品機械用グリスとは?一般的な製品との違いやH1規格について解説
性能や用途が異なるさまざまな種類のグリスが提供されているなか、食品工場での使用を想定した安全性の高い潤滑剤が「食品機械用グリス」です。
しかし、中には一般的なグリスと食品機械用グリスの違いに疑問を持っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで本記事では、食品機械用グリスの概要や一般的なグリス、食品機械用潤滑油との違いを解説します。
国際基準によって、食品機械での使用が認められている「H1グリス」についてもご紹介するので、自社で使用する潤滑剤にお悩みの方は、ぜひ参考にしてください。
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食品機械用グリスとは
食品機械用グリスとは、おもに食品製造機械の各種パーツをスムーズに動作させるために使用される潤滑剤です。
そもそもグリスとは、基油(ベースオイル)に増ちょう剤と添加物などを組み合わせた、半固体または固体状の潤滑剤です。
なお、グリスの潤滑性能や使用可能な環境は、使用されている基油や増ちょう剤によって大きく変化します。
工業系の製造機械の場合、使用する環境・用途によって、適切な耐熱性や耐水性、せん断安定性などを持つグリスを選定すれば、問題ありません。
一方、食品製造機械の場合、潤滑性能だけでなく、潤滑剤の混入リスクを考慮した安全性も必要になります。そのため、食品機械用グリスは人体に影響の少ない原料で構成されているのが特徴です。
食品機械用グリスと一般的なグリスの違い
食品機械用グリスとして、認可されている製品と一般的なグリスでは、おもに使用されている成分が異なります。
国際的な規格によって、食品との偶発的な接触が認められている「H1グリス」の場合、FDA(米国食品医薬安全局)から安全性の高い原料として、認可を受けている基油・添加物が使用されています。
具体的には、PAO(ポリアルファオレフィン)や流動パラフィン(ホワイトオイル)などを使用するのが一般的です。
一方、一般的なグリスの基油には、誤って口に入ってしまった場合、健康被害が発生する可能性のある鉱物油などが使用されています。
つまり、食品機械用グリスと一般的なグリスの大きな違いとしては、人体への有害性の大きさが挙げられます。
ただし、用途にかかわらず、ユーザーが求める潤滑性能は変わりません。そのため、潤滑剤として高い性能を維持しつつ、安全性の高い食品機械用グリスの開発が、オイルメーカーの課題となっています。
食品機械用グリスと食品機械用潤滑油の違い
食品機械用グリスと食品機械用潤滑油のおもな違いは以下の2点です。
- 増ちょう剤が含まれているかどうか使用する
- 箇所・用途が異なる
それぞれの違いを詳しく解説するので、自社の食品工場で使用するべき最適な潤滑剤を判断するためにご活用ください。
違い①:増ちょう剤が含まれているかどうか
食品機械用グリスと液状の食品機械用潤滑油のおもな違いは、増ちょう剤の有無です。
増ちょう剤(増粘剤)は、液体の粘性を高める目的でグリスに添加されています。
なお、それ以外の成分に関して、グリスと液状の潤滑油に大きな違いはありません。つまり、基油と添加剤で構成された潤滑油に増ちょう剤を加え、半固体または個体にした潤滑剤がグリスです。
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違い②:使用する箇所・用途が異なる
食品機械用グリスと食品機械用潤滑油はともに、安全性の高い原料を使用した食品工場向けの潤滑剤ですが、形状・性質の違いから、細かい使用箇所や用途が異なります。
そもそも潤滑剤は、機械の部品同士で発生する摩擦を軽減し、スムーズに動作させるために使用します。
しかし、潤滑する箇所によって、動作のスピードやかかる荷重などが異なるため、条件に合わせて適切な形状・性質の潤滑剤を使用しなければなりません。
たとえば、食品機械用潤滑油は、粘度が低く、浸透性の高い液体の潤滑剤であるため、荷重があまりかからないスプロケットやチェーンなどに使用します。
一方、食品機械用グリスは、粘度と吸収性が高いため、荷重がかかりやすいベアリングやブッシュ、ギアなどに使用するのが一般的です。
それぞれの性質を正しく理解したうえで適材適所、使用する潤滑剤を使い分けましょう。
食品機械用として使用される「H1グリス」とは?
H1グリスとは、公衆衛生・環境に関する第三者機関「NSF」が定める「H1規格」を満たした食品機械用グリスです。
市場に流通する食品の安全を守るため、NSFでは食品機械用潤滑油の規格を設定しており、その中のひとつがH1規格となります。
なお、H1規格に該当する潤滑剤はガイドラインによって「偶発的に食品に接触する可能性がある箇所で使用できる潤滑剤」と定められています。
したがって、H1グリスは食品製造工程において、万が一、潤滑剤が混入してしまっても、消費者の健康被害を最小限に抑えられることが保証されている安全性の高い潤滑剤といえます。
H1規格を認証する「NSF」とは
「NSF(National Sanitation Foundation International)」とは、公衆衛生や環境保護に関する規格の作成や製品評価・認証を実施している第三者機関です。
1996年には、WHO(国連世界保健機構)の協力機関に加わっており、食品や飲料水の安全性を高めるための国際的な活動に従事しています。
また、NSFではUSDA(米国農務省)の業務を引き継ぐ形で食品製造工場で使用する化学物質の認証登録も行っており、そのなかの1つとして食品機械用潤滑剤の規格を定めています。
したがって、NSFの規格をクリアした潤滑油は、設定された条件下において、世界基準の安全性を認められている製品といえるでしょう。
▼NSFについて分かりやすく知りたい方はこちらの動画もご覧ください。
H1以外のNSF規格一覧表
NSFでは、H1以外の食品機械用潤滑剤の規格として、以下のような区分を定めています。
NSF規格 | 規格の概要 |
H2 | 食品に接触する可能性のない箇所のみで使用できる潤滑剤 |
H3 | 肉を吊るすフックの防錆等に使用する潤滑剤 |
3H | 直接、食品に接触する前提で使用する潤滑剤 |
HT1 | 偶発的に食品に触れる可能性がある箇所で使用できる熱媒体油 |
HT2 | 食品に触れる可能性がない箇所で使用できる熱媒体油 |
食品機械用グリスのおもな用途
食品機械用グリスは、食品製造機械の以下のような箇所に使用されます。
- ベアリング
- ギア
- チェーンワイヤー
- スライドレール
- その他、摺動(しゅうどう)部品
上記の中でも、高負荷のギア・ベアリングなどの動作を補助する目的で使用されるのが一般的です。
また、食品製造工場では、オーブンや煮物釜など、高温になりやすい機械の潤滑や、流水による機械・食材の洗浄を行うケースも多いため、耐熱性・耐水性が重視される傾向もあります。
安全と高性能を両立したH1規格の食品機械用グリスをお探しなら
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H1グリースは、NSF H1規格を取得している食品機械用グリスとして、国際的に安全性を認められた潤滑剤です。
安全性だけでなく、食品工場で求められる潤滑性能を備えており、業界最高峰の滴温316℃を実現。過酷な高温下でも高い潤滑性能を維持できます。
また、耐水性や機械的安定性、耐荷重性にも優れており、幅広い食品工場や製造機械で使用できる汎用性も兼ね備えています。
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