ベアリングを潤滑する目的や潤滑油の選定方法を分かりやすく解説
ベアリングは機械に欠かせない部品です。
軌道輪、転動体、保持器から構成されており、効率的に稼働させるためにはグリースや潤滑油が必要です。
また、機械や使用環境などに合わせて、適切に潤滑材を選ばなければ、ベアリングの動作を最適化できません。
そこで、この記事では、ベアリングの構造や潤滑する目的などを解説します。
ベアリングの具体的な潤滑方法も詳しく解説しますので、ベアリングの基本知識や潤滑について知りたい場合は、ぜひ参考にしてください。
ベアリングの構造
ベアリングとは、あらゆる機械に使用され、モノの回転を手助けする部品です。
日本語では「軸受(じくうけ)」とよばれています。
ベアリングは、次の3つで構成されています。
- 軌道輪
- 転動体
- 保持器
それぞれの、役割や特徴を解説しますので、確認していきましょう。
構造①:軌道輪
軌道輪とは、リング状の部品であり、ボールが転がる輪と外輪のことです。
軌道輪は、後述する転動体を完全に包み込む形で配置されます。
内輪は通常、軸に固定され、外輪はハウジング(外輪と接触する部品)または機械のフレームに取り付けられます。
軌道輪の素材や形状、精度はベアリングの性能や耐久性に直接影響を与えるため、非常に重要です。
また、軌道輪は軸に対して直角方向にかかる力を支えるラジアルベアリングに使われます。
構造②:転動体
転動体とは、軌道輪を転がる部品です。
転動体にはボール状の「玉」と柱状の「ころ」があります。
玉を使うのはボールベアリングであり、ころを使うのがローラーベアリングです。
ローラーベアリングに使われるころには、以下が挙げられます。
- 円筒ころ
- 針状ころ
- 円すいころ
- 凸面ころ
玉やころは、回転速度や支える力の大きさなどに応じて適切な種類を選ぶ必要があります。
構造③:保持器
保持器とは、転動体が適切な間隔で均等に配置されるようにする部品です。
ベアリングは内輪が回転すると、転動体が転がり、保持器がないと転動体同士が接触してしまいます。
そのため、保持器は隣り合う転動体を分けて配置する役割があるのです。
また、保持器は回転速度や支える力の大きさなどに応じて、適切な種類を選ぶ必要があります。
例えば、打ち抜き保持器は、小型で小さな力を受けるペアリングに使われます。
削り出し保持器は、大きな力を受ける大型のベアリングに適するタイプです。
これらのさまざまな保持器は玉やころが外れないように型が取られています。
ベアリングを潤滑する目的
ベアリングの潤滑は、性能と寿命に直接影響を与える要素です。
潤滑の主な目的は、ベアリング内部の摩擦と摩耗を減少させることです。
ベアリング内部では、転動体、軌道輪、保持器などの部品が相互に接触して動くため、これらの摩擦を低減する必要があります。
そこで、潤滑をすることで、部品間の滑らかな動きにつながり、エネルギー効率が向上し、熱発生が抑えられます。
さらに、潤滑によって、ベアリング内の異物や汚染物質を排除することも可能です。
ベアリング内の異物や汚染物質を排除できると、腐食や早期の故障を防ぎます。
潤滑材によってベアリング部品を外部環境から保護し、特に湿気や化学物質などの腐食性環境下での損傷にも対策できます。
なお、ベアリングの種類や使用する環境によって、適する潤滑代を選ぶことが大事です。
ベアリングの潤滑方法
ベアリングの潤滑方法として、以下の2つがあります。
- グリース潤滑を使用する
- 油潤滑を使用する
それぞれについて解説します。
方法①:グリース潤滑を使用する
グリース潤滑とは、潤滑油をベースに増ちょう剤や添加物を混合したグリースで潤滑する方法です。
一度、グリースを充填すると長期間にわたり補給する必要がないため、幅広い用途で用いられています。
ただし、高温環境ではグリースが液化、低温環境ではグリースが硬化するため、適切に潤滑されない場合もあります。
また、いずれの方法を採用するにしても、グリースを補填する際は、容積の3分の1から2分の1程度で十分です。
補給する際は、同一銘柄のグリースの使用が望ましいです。
ここからグリース潤滑の方法として、密封方式と充填給脂法をご紹介します。
密封方式
グリース潤滑の密封方式とは、シールやシールド付きのベアリングにグリースを封入する方法です。
グリースを封入することから、長期的に効果が期待できる方法といえます。
充填給脂法
充填給脂法とは、ハウジングの内部にグリースを充填する方法です。
一定期間ごとにグリースを補給もしくは交換する必要があります。
補給する際は、清潔なグリースを使うことが前提で、さらに外部からごみが混入しないように注意が必要です。
【関連記事】グリースとは?潤滑油との違いや求められる5つの性能、種類を徹底解説
方法②:油潤滑を使用する
油潤滑は、高速・高温に耐えることができ、ベアリングの振動などの低下に効果がある方法です。
ベアリングを油に浸して使用し、油を循環させることから冷却効果も得られます。
ただし、運転温度に対して適切な粘度のオイルを選ばないと、温度上昇などのトラブルが発生します。
油浴潤滑
油浴潤滑とは、ベアリングを潤滑油に浸して機械などを運転させる方法です。
油潤滑の方法では、もっとも簡単でコストを抑えられる方式となります。
また、低回転から中回転までに適します。
滴下給油
滴下給油とは、給油機から油を滴下させ、ハウジング内を油霧で充満させる方法です。
比較的高速、荷重も中程度まで採用できる方法で、冷却効果もあります。
ただし、ハウジング内に油がたまりすぎないように注意が必要です。
飛沫給油
飛沫給油とは、ベアリングの軸に歯車などをつけて、油をはねかけ飛沫にして給油する方法です。
高速回転でも使用可能な方法であるものの、注意点もいくつかあります。
まずは、油面レベルを範囲内に保つことです。
それから、摩耗した鉄粉が油中に飛散しないように、磁気栓を用いる必要があります。
強制循環給油
強制循環給油とは、循環系の給油システムによる方法です。
給油された油がベアリング内部の各パーツを通って、タンクに戻る仕組みです。
強制循環給油は、高速回転、高温環境でよく使われる方法となります。
注意点としては、潤滑油がハウジングの内部にたまりすぎないように、排油管を給油管よりも太くすることです。
排油管を給油管の2倍程度の太さにするのが目安です。
【関連記事】ベアリングのオイル潤滑とグリス潤滑の違いとは?選び方の基準を解説
ベアリングの潤滑油 選定手順
ベアリングの潤滑油の選定手順は以下の通りです。
- 軸受形式による適正動粘度を確認
- 使用条件による適正動粘度を確認
潤滑油を選ぶ際は、ベアリングの運転温度で適正な粘度の油を選ぶことがポイントです。
そのためには、まず軸受(ベアリング)形式から適正な粘度の潤滑油を選んでください。
そして、使用条件をもとに適正な粘度の潤滑油を選びましょう。
軸受形式による適正動粘度を確認する
軸受形式による適正粘度の一例として、3種類ご紹介します。
軸受形式 | 運転温度における適正動粘度 |
玉軸受円筒ころ軸受 | 13mm2/s以上 |
円すいころ軸受自動調心ころ軸受 | 20mm2/s以上 |
スラスト自動調心ころ軸受 | 32mm2/s以上 |
引用元:JTEKT|潤滑材
上表の通り、軸受形式によって適正粘度が異なるため、あらかじめベアリングの特徴などを確認しておきましょう。
使用条件による適正動粘度を確認する
使用条件による適正粘度も表にしました。
運転温度 | dmn値 | 適正動粘度(ISO粘度グレード又はSAE No.で示す) | |||
軽荷重・普通荷重 | 重荷重・衝撃荷重 | ||||
-30~0℃ | 全範囲 | ISO VG 15、22、46 | (冷凍機油) | – | |
0~60℃ | 300000以下 | ISO VG 46 | (軸受油、タービン油) | ISO VG 68 | (軸受油、タービン油) |
SAE 30 | |||||
300000~600000 | ISO VG 32 | (軸受油、タービン油) | ISO VG 68 | (軸受油、タービン油) | |
600000以上 | ISO VG 7、10、22 | (軸受油) | – | ||
60~100℃ | 300000以下 | ISO VG 68 | (軸受油) | ISO VG 68、100 | (軸受油) |
SAE 30 | |||||
300000~600000 | ISO VG 32、46 | (軸受油、タービン油) | ISO VG 68 | (軸受油、タービン油) | |
600000以上 | ISO VG 22、32、46 | (軸受油、タービン油、マシン油) | – | ||
100~150℃ | 300000以下 | ISO VG 68、100 | (軸受油) | ISO VG 100~460 | (軸受油、ギヤ油) |
SAE 30、40 | |||||
300000~600000 | ISO VG 68 | (軸受油、タービン油) | ISO VG 68、100 | (軸受油) | |
SAE 30 | SAE 30、40 |
引用元:JTEKT|潤滑材
運転温度、さらに荷重によって適正な粘度が異なります。
使用条件等も事前に確認しておきましょう。
ベアリングにも使用できる潤滑油をお探しの方へ
ベアリングはさまざまな機械に使われており、部品の回転には欠かせない存在です。
軌道輪、転動体、保持器から構成され、円滑に機能するには、潤滑油が必要です。
グリース潤滑や油潤滑から適切に潤滑方法を選ぶことも大切です。
さらに、食品工場では潤滑性だけではなく、潤滑油自体の安全性も大事です。
高品質と安全性を重視したい場合は、「JAX JAPAN」が提供する「NSF H1潤滑油」をぜひご検討ください。
「NSF H1潤滑油」は、第三者機関の「NSF」が定める「H1規格」の潤滑油です。
安全性が高い原料を使っているため、オイル混入のリスクも低減できます。
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