潤滑油が変色する原因とは?劣化の判断方法も詳しく解説
潤滑油の色は、現場の技術者が視覚的に劣化を判断する上で、最も簡易的かつ迅速に判断できる情報です。
一般的には、新しい潤滑油は明るく透明な色調をしていますが、時間の経過とともに変色していきます。
特に注意が必要なのは、潤滑油が変色・劣化することで、本来の機能を失い、生産設備にトラブルを招く可能性がある点です。
機械の正常な運転と寿命を維持するためには、変色要因を把握し、適切な潤滑管理を実施することが重要です。
この記事では、潤滑油が変色する原因や劣化に伴い発生する問題を解説します。
潤滑油の劣化を診断する方法についても紹介するので、ぜひ参考にしてください。
潤滑油が変色する原因
潤滑油が変色する原因は、以下の4つです。
- 基油の酸化
- 熱分解や添加剤の変質
- 消耗などの化学的変化
- 液相・固相の混入
高温・高負荷などの厳しい条件下では、劣化や酸化が進行しやすく、その結果、潤滑油の性能が低下します。
潤滑油が変色する原因を知ることで、異常を早期に察知でき、経済的に保全できるでしょう。
原因①:基油の酸化
高温での機械作動や酸素との化学反応により、潤滑油の基油が酸化します。
基油の酸化は、主成分である炭化水素が酸素と反応することで、炭素と水素が酸化され、酸化物が生成される現象です。
酸化が進むと、基油の特性である潤滑性や酸化安定性が悪化し、潤滑油としての機能が低下します。
機械部品の摩耗やスラッジを引き起こし、摩擦や磨耗が増加するでしょう。
原因②:熱分解や添加剤の変質
通常、潤滑油は周辺環境や摩擦熱などによって高温にさらされます。
高温環境下で潤滑油を構成する成分が分解され、添加剤も変質し、変色の原因となるのです。
熱分解は、高温によって潤滑油中の分子が別の物質に変化する現象を指します。
また、性能を向上させたり、劣化を防いだりするためにも潤滑油には多くの添加剤が含まれています。
しかし、潤滑油が高温や長期間の使用にさらされると、添加剤も変質し、潤滑性能に悪影響を与えてしまうことも。
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【関連記事】潤滑油添加剤とは?9つの種類別に特徴や成分、用途・役割を徹底解説
原因③:消耗などの化学的変化
潤滑油は使用環境下で酸化や重合などの化学反応が進み、時間とともに変質・劣化します。
例えば、粘度が低下すると摺動面で油膜の形成が不十分になり、固体接触の危険性が増し、摩耗が増大します。
変色は、潤滑油が使用される過程でさまざまな化学的変化が起こる結果として生じるものであり、これらの変化が潤滑油の劣化を引き起こすでしょう。
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原因④:液相・固相の混入
潤滑油の変色の原因には、以下の液相・固相などの異物混入による汚損があります。
- 水分(液相)
- 異物油(液相)
- 塵埃(固相)
- 金属粉(固相) など
例えば、潤滑油のタンクや配管の温度差により、結露が発生することで、水分が混入します。
潤滑油に水分が混入すると、空気中の酸素と触れ合って酸化を発生させ油が劣化します。
潤滑油が酸化することによって、錆を発生させるだけでなく、オイルの劣化促進によるスラッジが形成され、機械の作動不良など、さまざまな機械トラブルの原因につながるため注意が必要です。
潤滑油が変色(劣化)すると発生する問題
潤滑油が変色・劣化すると、機械の正常な動作や寿命を妨げるだけでなく、安全性や効率性にも悪影響を与えます。
潤滑油が変色すると発生する問題について、詳しく解説していきます。
問題①:機器の劣化
潤滑油が変色すると、金属部の摩擦や摩耗が増加し、機器が徐々に消耗していきます。
潤滑油は、主に金属同士の接触面でスムーズな動きをさせ、摩擦や摩耗を低減させる役割を果たします。
十分な潤滑が確保されないと、機器内の摩擦が増加し、機械部品が劣化していく要因となるのです。
潤滑油の交換は容易ですが、すり減った金属部品は、同等の部品と交換できない場合、寿命が急速に短くなります。
問題②:部品の高温化
潤滑油が変色すると、潤滑性能が正しく機能しなくなり、金属部品の激しい摩擦や摩耗によって、部品が高温になる可能性があります。
潤滑油は、エンジン内部をめぐって、摺動面の摩擦や摩耗を低減し、発熱部から熱を奪って冷却する役割を果たします。
劣化した潤滑油は冷却作用を上手く果たせず、部品の温度が上昇し、高温化が発生します。
部品が高温になると、熱応力や熱疲労により寿命が短くなるリスクや、触れるとやけどをする危険が生じるので注意しましょう。
問題③:エンジンの汚損
劣化した潤滑油を使用すると、エンジン内部が汚れや堆積物で覆われ、清浄な動作を妨げます。
エンジンは燃料を気体に変換し、圧縮して動力を生成します。
気化した燃料が圧縮されにくくなるため、エンジン効率が低下し、最終的に故障の原因となるでしょう。
また、エンジンの燃焼で発生するすすなどで潤滑油が汚染されると、エンジン内部に異物が混入し、エンジン部品の摩耗や腐食を引き起こします。
潤滑油が劣化しているかの判断方法
潤滑油が劣化しているかの判断方法は、以下の3つです。
- 変色の度合い
- 誘電率
- 中赤外分光法
それぞれを詳しく見ていきましょう。
【関連記事】潤滑油の劣化分析とは?3種類の分析法と代表的な試験項目を解説
方法①:変色の度合い
潤滑油の色による劣化診断は、視覚的な手法であり、コストをかけずに潤滑油の劣化状況を把握するのに有益です。
基本的に、新品状態の潤滑油の色は、利用する潤滑油の種類や機器によって異なります。
劣化が進むと、潤滑油は赤黒っぽく変色していきます。
変色の度合いで劣化具合を判断する基準は、ASTM番号です。
ASTM番号は、石油製品の色を淡い色(0.5)から濃い色(8.0)までの範囲で数値化した指標です。
試料とASTM色標準ガラスを比較することで、潤滑油の劣化具合が予測できます。
新品状態の潤滑油から2以上濃く変化していたら、酸化劣化限界に達しています。
方法②:誘電率
誘電率・導電率での潤滑油の診断は、主に含まれる不純物によって変化する潤滑油の誘電率を測定し、劣化を診断する方法です。
潤滑油が劣化する原因の多くは、以下の不純物の生成および混入です。
- 鉄粉
- すす
- 水分
- 酸化物 など
不純物の多くは誘電率が高いため、誘電率や静電容量の値が大きいほど、潤滑油の劣化・変質が進んでいると判断されます。
誘電率での劣化診断は、センサーを使用してさまざまな箇所をリアルタイムでモニタリングできるため、早期に異常があるかを把握し、対策を講じることが可能です。
しかし、誘電率だけでは、潤滑油の総合的な異常しか検知できないため、具体的な異常の原因や要因を特定することは難しいケースもあります。
方法③:中赤外分光法
中赤外分光法は、その名のとおり赤外線を活用して、潤滑油の分子構造を詳細に分析する方法です。
例えば、劣化した潤滑油には異常な分子が生成されるため、反射される赤外線の周波数(スペクトル)を読み取ることで、物質の化学変化や汚染状態を検出できます。
赤外線分光法は変色の度合いや誘電率を使った診断方法よりも、正確に潤滑油の劣化要因を細かく診断できるのがメリットです。
一方で、現場で簡単かつ迅速に測定することが難しいというデメリットがあります。
しかし、中赤外分光法の結果を解析することで、潤滑油中の分子組成や状態の変化など、劣化の進行具合を具体的に把握できます。
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