鉱物油と合成油、どっちがいいの?3つの違いや使い分けを徹底解説!
機械のスムーズな動作に欠かせない潤滑油。潤滑油といっても、鉱物油・合成油・部分合成油の3種類に分けられており、それぞれの特徴や推奨される場面が異なります。
自社の機械や設備を安全に、また円滑に作動させるには、潤滑油の特性を理解したうえで適切に選ばなければなりません。
そこでこの記事では、3種類ある潤滑油の概要を解説したのち、鉱物油と合成油の違いを成分・製造方法・特徴の3つの観点から明らかにします。
どのような場面で利用されているのかも紹介していますので、潤滑油を選ぶ際の参考としてぜひご覧ください。
潤滑油は3種類ある
潤滑油は、全体の8割を占めるベースオイル(基油)と、2割を占める添加剤で構成されています。
大部分を占めるベースオイルの成分により、潤滑油は以下の3つに分けられます。
- 鉱物油
- 化学合成油
- 部分合成油
まずは、潤滑油を選ぶうえで大切な種類ごとの違いを理解しましょう。
種類①:鉱物油
潤滑油の中では歴史が長く、普及率の高いベーシックな種類です。
製造工程が簡単なため、精製後のオイルに不純物が残りやすいといった特徴があります。
化学合成油と比べると、酸化しやすく劣化が早いことや耐熱性も劣りますが、価格帯が比較的リーズナブルな点はメリットといえるでしょう。
種類②:化学合成油
製造工程が複雑な分、不純物の混入率が一番少ないオイルで「100%化学合成油」と表される場合もあります。
耐熱性や低温環境での始動性に優れており、劣化しにくい点が特徴です。
高品質・高純度がメリットではあるものの、化学合成油が適さない製品もあるため注意が必要です。
また、価格が高いことも懸念点に。ランニングコストや適性、使用する環境を踏まえたうえで、慎重に選ぶ必要があるでしょう。
種類③:部分合成油
鉱物油と化学合成油を混ぜて精製されているのが、部分合成油です。
鉱物油ではカバーできないデメリットを、化学合成油で補強している点が特徴。
そのため、鉱物油に比べると燃費も向上しているほか、低温性や劣化性も改善されています。ただし、個々の品質は、それぞれの成分配合比率により左右されるため、成分を確認する必要があることを覚えておきましょう。
値段は、鉱物油より高くなるものの、高級オイルといわれる化学合成油よりは安価です。
【関連記事】潤滑油の種類と特徴|機械に最適な選択肢を見つけるポイントも解説
鉱物油と合成油の違い
ここでは、鉱物油と合成油の違いを以下の順で詳しく解説します。
- 成分
- 製造方法
- 特徴
自社に合う潤滑油を見つけるためにも、きちんと理解しましょう。
違い①:成分
原油から精製される鉱物油と、化学合成を経て仕上げられる合成油とでは、ベースオイルに含まれる成分に違いがあります。
それぞれを代表する成分とその特徴については、下表のとおりです。
鉱物油 (ミネラル) |
成分 | 特徴 |
パラフィン系 | ・パラフィン炭素数(%CP)を5割以上含む ・多くの潤滑油に使用される ・粘度範囲が広い |
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ナフテン系 | ・ナフテン炭素数(%NP)を3割以上含む ・粘度指数が低い ・流動点が非常に低い |
合成油 (シンセティック) |
成分 | 種類 | 特徴 |
炭化水素水 | ・ポリアルファオレフィン(PAO) ・ポリブデン ・アルキルベンゼン ・シクロアルカン類 |
・炭化水素水が主成分として構成される ・粘度範囲が広く低温流動性に優れている ・耐ゴム、耐樹脂性にも優れている |
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エステル系 | ・ジエステル(DOS) ・ポリオールエステル ・リン酸エステル ・モノエステル |
・脂肪酸とアルコール、または脂肪酸とグリセリンで構成される ・熱安定性、潤滑性に優れている ・リン酸エステルは難燃性、耐摩耗性が高い |
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エーテル系 | ・ポリグリコール ・フェニルエーテル |
・ポリグリコールは粘度範囲が広くスラッジを生成しない ・一方、吸湿性を有する ・フェニルエーテルは耐熱性、耐放射線性に優れている |
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シリコーン系 | ・ポリシロキサン
・シリケートエステル |
・耐熱性、低温性、熱安定性に優れている ・誘電特性に優れている ・ポリシロキサンは酸化安定性もある |
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フッ素系 | ハロカーボン | ・熱安定性、酸化安定性に優れている ・耐薬品性、耐熱性、酸化安定性に優れており劣化しにくい ・低温流動性に欠ける |
上記のほかにも、鉱物油・合成油を構成する成分はさまざまありますが、種類ごとの傾向を理解する要素として参考にしてください。
なお、ベースオイルの成分については、以下の記事で詳しく解説しています。
【関連記事】ベースオイルとは?潤滑剤に使用されるおもな種類・成分と役割を解説
違い②:製造方法
鉱物油は、常圧蒸留した原油を減圧蒸留したあと得たものから、以下いずれかの製造工程を経て精製されます。
- 水素化分解による基油精製方法
- 溶剤抽出ののち水素化精製する方法
溶剤抽出を行う場合、水素化精製でなく、白土精製で仕上げる場合もあります。
一方、化学合成油は、化学分解した原油に、潤滑に必要な成分を合成して精油する方法が一般的です。
鉱物油に比べて、化学合成油を使用した潤滑油が高価になる要因として、目的に応じた成分配合が求められるといった製造方法の複雑さにあるといえるでしょう。
違い③:特徴
先ほど解説したように、化学合成油に比べて製造工程が単純化されている鉱物油は、不純物が残りやすい傾向にあります。
そのため、熱に対する安定性が低く、品質・性能面においては化学合成油に劣るでしょう。
とはいえ、比較的リーズナブルな価格帯であることや、広い粘度範囲からオイルを選べる点がメリットに挙げられます。
頻繁に交換する場合や、長時間の作動を必要としない場合は、ランニングコストも踏まえたうえで鉱物油を選択することがおすすめです。
対して、化学合成油は、潤滑油の中でもっとも純度が高いオイルであることから、対応温度の範囲が幅広いだけでなく、劣化・蒸発しにくい点がメリットです。
ただし、オイル自体が高価になるため、むやみに使用することはおすすめできません。
低温下や高温下、真空下での使用など、限定的ではあるものの、鉱物油では適さない条件においては十分に活用できるでしょう。
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鉱物油と合成油のどっちを使う?利用例
鉱物油と合成油では、成分・性質の違いから適した環境が異なります。
それぞれの利用例を参考に、自社に合う潤滑油を見つけましょう。
鉱物油の利用例
鉱物油は古くから精製されているオイルでもあり、車のエンジンオイルやギアオイルをはじめ、工業用の油圧作動油など幅広い場面で使用されています。
酸化・劣化しやすいため燃費が悪い点が懸念されるものの、こまめに交換することで問題なく使用できます。
安価なものが多いため、オイルにかかる出費を抑えたい場合にもおすすめです。
また、エンジンオイルとして使用する場合は、高品質な化学合成油ではなく鉱物油が推奨されることも。クラシックカーなどの古い車種では、化学合成油が適していないことがあるため覚えておきましょう。
合成油の利用例
化学合成油は、ジェットエンジン油や油圧作動油、チェーンオイルなどに使用されます。
これらを使用する環境下では、鉱物油では補えない化学合成油ならではの特出した性能が求められるからです。
たとえば、ジェットエンジン油やチェーンオイルには、高温環境に耐え得る耐熱性や、温度変化に対応できる粘度範囲が必要となるでしょう。
また、熱を発する場面においては、難燃性の高さも欠かせません。鉱物油に比べて高価ではあるものの、機械や装置の安全性・耐久性を維持するためには、化学合成油を選ぶ必要があるのです。
なお、チェーンオイルの必要性や役割については、以下の記事で詳しく解説していますので参考にしてください。
【関連記事】チェーンオイルの必要性とは?おもな役割と代表的な種類・特徴を解説
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【関連記事】潤滑油の適切な保管方法とは?3つの注意点や消防法における数量指定を解説