潤滑油を構成する成分とは?ベースオイルと添加剤の種類別に解説
自社機械で使用する潤滑油を選定する際は、含有成分を確認する必要があります。
潤滑油に含まれる成分の違いを比較し、潤滑環境に適した性能を持つ製品を選ぶことが大切です。
しかし、潤滑油の構成要素や成分に関する知識がなく、どのような製品を選ぶべきか分からないという方も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、潤滑油を構成する成分について詳しく解説します。ベースオイルと添加剤の種類別に含有成分や特徴を紹介するので、潤滑油を選定する際の参考にしてください。
潤滑油を構成する成分
潤滑油は以下の2つの成分で構成されています。
- ベースオイル
- 添加剤
ここからは、潤滑油を構成する2つの成分について詳しく解説します。
成分①:ベースオイル
ベースオイル(基油)は、潤滑油の80〜90%を構成する主要成分です。
含有量が多いため、ベースオイルは潤滑油の性能を決める基盤となります。
潤滑油を選定する際は、まずベースオイルの成分を確認しましょう。
【関連記事】ベースオイルとは?潤滑剤に使用されるおもな種類・成分と役割を解説
成分②:添加剤
添加剤は、潤滑油の10〜20%を構成する成分です。
用途や使用環境に応じて、潤滑油にさまざまな機能を追加するために添加剤を使用します。
自社の潤滑環境に適した潤滑油を選定するためには、ベースオイルと添加剤の組み合わせや相性を確認することが重要です。
【関連記事】潤滑油添加剤とは?9つの種類別に特徴や成分、用途・役割を徹底解説
【種類別】潤滑油に含まれるベースオイルの成分
潤滑油に含まれるベースオイルは、おもに以下の2種類に分かれます。
- 鉱物油
- 合成油
ここからは、種類ごとにベースオイルの特徴と主要な成分を解説します。
種類①:鉱物油
鉱物油は、おもに石油を原料として生成されたオイルです。
幅広い用途で使用されるベーシックな種類といえます。
なお、鉱物油は成分の違いによって、おもに以下の2種類に分類されます。
鉱物油の種類 | 概要・特徴 |
パラフィン系 |
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ナフテン系 |
|
合成油と比較して粘度指数や耐久性は劣りますが、その分価格が安いのが特徴です。
種類②:合成油
合成油は化学合成によって作られるオイルです。
不純物が少ないため、劣化しにくいだけでなく、高い潤滑性能と熱安定性を誇ります。
なお、合成油は成分の違いによって、以下のように分類されます。
合成油の種類 | 代表的な成分 | 概要・特徴 |
合成炭化水素油 |
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エステル油 |
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エーテル油 |
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シリコーン油 |
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フッ素油 |
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鉱物油と比較してオイルとしての品質や性能は高いですが、その分高価なのでイニシャルコストがかかりやすいというデメリットもあります。
【関連記事】鉱物油と合成油、どっちがいいの?3つの違いや使い分けを徹底解説!
【種類別】潤滑油に含まれる添加剤の成分
ここからは、潤滑油に含まれる添加剤の成分を種類別に解説します。
潤滑油の性能を正しく理解するためにも、各添加剤の構成成分を把握しておきましょう。
種類①:耐荷重添加剤
耐荷重添加剤とは、潤滑油本来の性能を向上する添加剤です。
高荷重・高負荷の環境に耐える油膜を形成し、部品の摩耗や焼き付きを軽減させる働きを高めます。
なお、耐荷重添加剤は、おもに以下の3つの種類に分かれます。
- 油性剤
- 摩耗防止剤
- 極圧剤
それぞれの主要成分と添加量は、以下の通りです。
添加剤の種類 | 成分・化合物 | 添加量 |
油性剤 |
|
0.1~1% |
耐摩耗剤 |
|
5~10% |
極圧剤 |
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5~10% |
種類②:清浄分散剤
清浄分散剤とは、油中の不純物を取り除き、潤滑油を長持ちさせるための添加剤です。
高温環境で使用する潤滑油に添加されるケースが多く、潤滑油を劣化・酸化させるスラッジの生成を阻害したり、中和したりする役割を担います。
なお、清浄分散剤は、清浄剤と分散剤の2種類に分かれます。
それぞれの主要成分と添加量は、以下の通りです。
添加剤の種類 | 成分・化合物 | 添加量 |
清浄剤 |
|
2~10% |
分散剤 |
|
なお、JAX JAPANでは耐熱性と自浄作用が高く、スラッジレスを実現できるチェーン油を取り扱っています。
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種類③:酸化防止剤
酸化防止剤とは、潤滑油の酸化や劣化を防止するための添加剤です。
高温下で使用する潤滑油に添加されるケースが多く、酸化を防止することで、スラッジの生成を抑制し、オイルを長持ちさせる働きがあります。
保管中の潤滑油を酸化させないように用いられるケースもあり、幅広い用途のオイルに使用される添加剤です。
なお、酸化防止剤の主要成分は、以下の通りです。
- フェノール類
- チオリン酸亜鉛
- アミン類 など
酸化防止剤は潤滑油の総量に対して、0.1〜1%程度添加されます。
種類④:粘度指数向上剤
粘度指数向上剤は、潤滑油の粘度指数を向上させるための添加剤です。
高温下や低温下における潤滑油の粘度変化を抑制できるため、過酷な環境において安定的な潤滑性能を維持するのに役立ちます。
また、温度変化による粘度の上昇を抑制できれば、消費電力やオイルの消費量の削減にもつながるでしょう。
なお、粘度指数向上剤の主要成分は、以下の通りです。
- オレフィン共重合体
- ポリアルキルメタクリレート
- ポリイソブチレン など
粘度指数向上剤は潤滑油の総量に対して、2〜10%程度添加されます。
【関連記事】潤滑油の粘度とは?これを知れば、適切な潤滑油の選定ができます!
種類⑤:流動点降下剤
流動点降下剤は、低温流動性を高めるための添加剤です。
潤滑油の粘度が上がり、流動性が失われやすい低温環境において潤滑性能を維持する働きを担います。
なお、流動点降下剤の主要成分は、以下の通りです。
- フマレート・酢酸ビニル共重合体
- アルキル化芳香族化合物
- エチレン・酢酸ビニル共重合物
- ポリメタクリレート など
流動点降下剤は潤滑油の総量に対して、0.1〜0.5wt%程度添加されます。
種類⑥:腐食防止剤
腐食防止剤は、金属の腐食を防ぐ目的で使用される添加剤です。
金属の表面に保護膜を形成することで、腐食を引き起こすおもな原因である水分と酸素の接触を防ぐ働きがあります。
なお、腐食防止剤の主要成分は、以下の通りです。
- ジアルキルジチオリン酸塩
- 窒素化合物 など
腐食防止剤は潤滑油の総量に対して、0.4〜2%程度添加されます。
種類⑦:錆び止め剤
錆び止め剤は、鉄が錆びる現象を防止する添加剤です。
原理は腐食防止剤と同じですが、鉄の腐食である錆が対象なので、鉄製の機械部品に塗布される潤滑油に使用されます。
なお、錆び止め剤の主要成分は、以下の通りです。
- カルボン酸
- アルコール
- スルホネート
- エステル
- リン酸塩 など
錆び止め剤は潤滑油の総量に対して、0.1〜1%程度添加されます。
種類⑧:抗乳化剤
抗乳化剤は、潤滑油の乳化を防ぐ作用を備えた添加剤です。
油中に水分が混入することで発生する乳化を抑制し、潤滑油の性質変化や劣化を防ぐ役割を担っています。
なお、抗乳化剤の主要成分は、以下の通りです。
- ポリオキシエチレン系の活性剤
- 第四級アンモニウム塩
- 硫酸化油 など
抗乳化剤は潤滑油の総量に対して、3%未満の範囲で添加されます。
種類⑨:消泡剤
消泡剤は潤滑油における泡の発生を抑えるための添加剤です。
潤滑油の泡立ちを予防したり、発生した泡を消したりすることで、オイルの酸化や劣化を抑制します。
なお、消泡剤の主要成分は、以下の通りです。
- 金属石鹸
- 有機フッ素化合物
- ポリメチルシロキサン
- シリケート など
消泡剤は潤滑油の総量に対して、1〜100ppm程度添加されます。
トラブルを防止するには潤滑油の成分分析も重要
自社機械における潤滑トラブルを防ぐには、潤滑油の成分分析も必要です。
成分分析によって、使用中の潤滑油に発生している変化を正しく理解することで、将来的に起こり得るリスクを予防できます。
具体的には、以下のような項目を調べ、使用中の潤滑油に異常がないか確認することが大切です。
- 酸化の進行度、全塩基価(オイルのアルカリ値)
- 動粘度の変化
- 清浄度(不純物や摩耗粉の量や成分)
- 含水量 など
例えば、使用期間に対して潤滑油の動粘度が著しく変化している場合は、潤滑環境に適した粘度、または粘度指数の潤滑油を使用できていない可能性があります。
潤滑油の成分分析によって将来のリスクを予見し、適切な性能を持つオイルを選定し直すことで、機械の長寿命化とメンテナンスコストの削減につながるでしょう。
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