グリースの引火点とは?消防法上の分類と耐熱製品の選定ポイントを解説
グリースの引火点は、安全性と性能に直結する重要な要素です。
引火点が高いほど、グリースは高温下でも安全に機能し、火災のリスクが低減されます。
また、消防法上の分類を理解することで、火災リスクを正確に把握できます。
適切な製品選定を行うことで、作業環境の安全性を高められるでしょう。
この記事では、引火点の基本概念をはじめ、消防法に基づく分類、耐熱性の高いグリースの選び方について詳しく解説します。
自社の用途に最適なグリースを見つけたい方は、ぜひ参考にしてください。
グリースは燃える?引火点を解説
グリースは、引火点を超えると燃える危険性があります。
引火点とは、グリースを加熱したときに出る蒸気が空気と混ざり、火を近づけると一瞬で燃え始める最低温度です。
通常、グリースの引火点は120〜300℃と高く、一般的な使用環境で燃える可能性はありませんが、以下のケースでは火災のリスクがあります。
- 高温環境下での使用
- 火気近くでの保管
- 機械の過負荷
- 摩擦熱の発生 など
なお、耐熱グリースは高温下でも燃えにくい特性を持っています。
適切なグリース選定や保管環境の管理を徹底することで、火災リスクを最小限に抑えられるでしょう。
グリースの消防法上の分類
グリースは、燃えやすさや性質に応じて、以下の3つに分類されています。
- 第四類危険物
- 可燃性固体類
- 非危険物
消防法は、火災や爆発のリスクがある物質を「危険物」と定義し、取り扱いを管理する法律です。
第四類危険物は、20℃で液体となり、引火点があるグリースが該当します。
例えば、ちょう度番号000のように非常に柔らかく、液体に近いグリースが第四類危険物に含まれます。
一方、可燃性固体類は、温度が20℃を超え、40℃以下で液体となるグリースです。
引火点は40℃から200℃の範囲にあり、低融点のグリースなどが含まれます。
危険性が異なるため、どの分類に当てはまるかを確認することが重要です。
【関連記事】潤滑油は危険物なのか?危険性と適切な管理・取り扱いを徹底解説!
高温下でグリースを使用する際に発生する3つの事象
高温下でグリースを使用すると、以下の問題が発生する可能性があります。
- グリースの軟化・流出
- グリースの酸化・劣化
- 機械部品の摩耗・焼き付き
潤滑トラブルを事前に回避するためにも、高温下のグリースに起こり得る事象を把握しておきましょう。
事象①:グリースの軟化・流出
高温下では、グリースの性質が変化し、軟化や流出が起こりやすくなります。
この現象が発生する理由は、熱によって増ちょう剤の網目状構造が崩れ、グリースが流動性のあるゾル状態に変わってしまうためです。
一般的に、グリースは約130°Cで半固体の状態を維持できる限界に達するといわれていますが、製品によって耐熱性は異なります。
なお、軟化したグリースが機械部品から漏れ出すと、製品に混入する危険性もあるため、注意が必要です。
特に食品工場では、グリースの成分が食品に触れることで、食品の安全性が損なわれる可能性があります。
事象②:グリースの酸化・劣化
高温下でグリースが酸化・劣化すると、以下の問題が発生します。
- 蒸発の増加
- スラッジの生成
- 油分の高粘度化
- 異臭の発生 など
その結果、グリースの性能が低下し、機械の動作に悪影響を与える可能性があります。
酸化を防ぐために酸化防止剤が添加されますが、使用されるベースオイルや増ちょう剤の種類も、酸化に対する耐性に影響を及ぼします。
だからこそ、グリースを構成する成分の種類や使用されている添加剤を確認したうえで、自社機械の使用環境に適した性能を持つグリースを選ぶことが大切です。
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事象③:機械部品の摩耗・焼き付き
高温下では、以下の理由でグリースの油膜が破断しやすくなるため、機械部品の摩耗や焼き付きが起こるリスクが高まります。
- 粘度の低下
- 酸化・劣化
- 蒸発や液状化 など
油膜は、機械部品の間に薄い保護層を作り、金属同士の直接接触を防ぐ重要な役割を果たします。
そのため、高温下での機械トラブルを防ぐには、耐熱性の高いグリースを使用することが、非常に効果的です。
なお、JAX JAPANでは、高温下でも優れた潤滑性能を発揮する耐熱性の高い潤滑剤を取り揃えています。
過酷な環境下でも安心して使用できるグリースをお探しの方は、ぜひ以下の耐熱製品ラインナップをご確認ください。
引火点が高いグリースの選定ポイント3選
引火点が高いグリースの選定ポイントは、以下の3点です。
- 滴点
- ベースオイル(基油)
- 増ちょう剤
それぞれの要素が高温下での安全性とパフォーマンスに大きく影響します。
紹介する3つのポイントを把握し、自社の適したグリースを選定しましょう。
ポイント①:滴点
滴点が高いグリースは、高温環境でも固体の状態を保ち、優れた潤滑性能を維持します。
滴点とは、グリースが半固体から流動状に変わる温度です。
滴点が高いグリースは、高温環境でも形状を維持しやすく、潤滑性能を効果的に保てるでしょう。
逆に、滴点が低いグリースは、高温にさらされると早期に液状化し、周囲の酸素と接触する機会が増えるため、引火の危険性が高まります。
高温での使用が求められる環境では、滴点が高いグリースを選ぶことで、温度上昇時にも軟化や流出を防ぎ、安全性を確保できるでしょう。
ポイント②:ベースオイル(基油)
ベースオイルは、グリースの主要成分であり、潤滑性や耐熱性に大きく影響します。
鉱物油は、比較的安価で幅広い用途で使用できますが、合成油よりも酸化しやすいのが特徴です。
一方、合成油は耐熱性や熱安定性に優れ、高温下でも安定した潤滑性能を発揮しますが、製品価格が高額です。
コストはかかるものの、高温下での安全性と耐久性が重要な場面では、化学合成油の使用をおすすめします。
【関連記事】ベースオイルとは?潤滑剤に使用されるおもな種類・成分と役割を解説
ポイント③:増ちょう剤
増ちょう剤は、グリースの性能を左右する重要な要素です。
特に、高温下での耐久性や潤滑性能には、増ちょう剤の性能が大きく影響します。
耐熱性に優れた増ちょう剤の代表例としては、以下の3つが挙げられます。
- リチウムコンプレックス
- ポリウレア
- PTFE
上記のような耐熱性の高い増ちょう剤を含むグリースを選ぶことで、過酷な環境でも長期間にわたって安定した潤滑性能を保てるでしょう。
なお、食品工場のように高い安全基準が求められる環境では、JAX JAPANが提供するH1グリース「ハローガードFG」がおすすめです。
優れた耐熱性と潤滑性能を持ち、過酷な環境下でも機械の保護と効率的な運転を実現します。
ハローガードFGの性能を詳しく知りたい方は、以下のページからご確認ください。
【関連記事】JAXのH1グリース「ハローガードFG」ってどんな製品?
一般的なグリースと耐熱製品の性能比較
一般的なグリースと耐熱製品の性能差は、下表の通りです。
一般的なグリース | 耐熱グリース (JAXハローガードFG) |
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使用可能温度 |
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滴点:254~316°C(160°前後での使用が多い) |
主な用途 | 標準的な温度環境での使用 |
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それぞれの耐熱性能を詳しく解説するので、グリースを選定する際の参考としてご活用ください。
一般的なグリースの耐熱性能
一般的なグリースは、約130°C程度までの温度でしか安定した性能を発揮できません。
そのため、小型の機械部品や低速で動く箇所など、中低温環境で使われるケースが一般的です。
しかし、自動車のエンジンや食品工場の機械では130°Cを超えるケースも少なくありません。
熱によってグリースが軟化すると、以下の問題が発生するリスクが高まります。
- 潤滑性能の低下
- 騒音
- スラッジの発生 など
高温環境で使用するグリースには、使用温度に適した耐熱性があるグリースを選ぶことが大切です。
耐熱グリース(JAX製品)の性能
JAX製の耐熱グリースは、高温下でも以下のような優れた性能を発揮します。
- 高い滴点
- スラッジの発生防止
- 優れた機械安定性
- 高い酸化安定性 など
例えば、食品工場で稼働するベアリングに使用されるグリースは、過熱による液状化や機械内部での固化といった問題が確認されるケースも少なくありません。
JAX製の耐熱グリースを使用することで、過酷な環境下でも潤滑性能を維持できるでしょう。
また、H1グリースは食品工場での安全基準に適合しており、製品の品質管理にも役立ちます。
過酷な環境でも使用できる安全性の高いグリースをお探しの方は、H1グリースをぜひご検討ください。
引火点と耐熱性が高い上質なグリースをお探しなら
引火点と熱性の高いグリースを使用することで、熱による軟化や劣化を防ぎ、潤滑性能を維持できます。
特に、高温になりやすい食品・飲料機械などの過酷な環境下では、安全性と耐熱性を両立した潤滑剤を使用する必要があります。
そのような引火点と耐熱性が高い上質なグリースをお探しなら、JAX JAPANへお任せください。
JAX JAPANでは、高温下での潤滑トラブルを効果的に防ぐグリースを用途に応じて幅広くご用意しています。
製品ごとの具体的な性能やラインナップに興味がある方は、以下のページをご確認ください。
また、自社の用途に適した潤滑油が分からないという方も、お気軽にJAX JAPANまでご相談ください。
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