チェーンを守る注油の基本とは?注油が必要な場所と適切な頻度を解説
チェーンは、エンジンや動力源からの推力を次の工程に伝達するために使用されている部品です。産業分野だけではなく、さまざまな機械・装置にチェーンが使用されています。
そして、動きをスムーズに保つ注油は、重要なメンテナンス工程です。チェーンの注油が適切に行われていない場合、伝動がうまく得られないばかりではなく、チェーンそのものの寿命を損なう恐れもあります。
本記事ではチェーン注油の基本と、注油が必要な場所や頻度を詳しく解説していきます。
チェーンへの注油について詳しく知りたい方は、ぜひ最後までご覧ください。
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チェーンへの注油は重要度の高いメンテナンス
チェーンへの注油は、基本的かつ重要度の高いメンテナンスに含まれています。なぜなら、チェーンが抵抗なく動くためには、チェーンオイル注油による油膜の形成が必要不可欠だからです。
油膜は部品同士を保護するクッションの役割をしてくれます。結果として、チェーンの摩擦を最小限にし、チェーンの寿命を最良にしてくれるでしょう。
一方、油膜がないチェーンは、摩耗による劣化を引き起こし、騒音などの新たな不具合を引き起こす場合もあります。チェーンへの注油は、チェーンの消耗や機械の寿命にも影響を与えるメンテナンスとして重要な工程です。
関連記事:チェーンオイルの必要性とは?おもな役割と代表的な種類・特徴を解説
チェーンの基本構造
ここでは、チェーンの基本構造を以下の観点に分けて解説していきます。
- 代表的なチェーンの種類
- ローラチェーンの構成パーツ
- 注油が必要な場所
それぞれの特徴や用途を紹介しています。自社のチェーンと比較検討する際に、活用してください。
代表的なチェーンの種類
代表的なチェーンの種類や特徴を一覧表にしてまとめました。自社の機械に最適なチェーンを選定する際に、ぜひご活用ください。
チェーンの種類 | 特徴 | 用途 | 構造 |
ローラーチェーン |
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サイレントチェーン |
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リーフチェーン |
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コンベヤチェーン |
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ローラチェーンの構成パーツ
ローラーチェーンは、おもに5つのパーツから成り立ちます。
- 外側プレート:チェーンにかかる荷重を支える
- 内側プレート:チェーンにかかる荷重を支える
- 軸(ピン):プレート同様荷重を支え、せん断や曲げ応力を受ける
- ブシュ:回転するローラーを正しい位置で支える
- ローラー:歯車(スプロケット)と噛み合う
外リンクと内リンクを1つ置きに連結させたものが、ローラーチェーンです。外リンクは2枚の外側プレートでピン・ブシュ・ローラーを挟み、内リンクは外リンクと同様に内側プレートでピン・ブシュ・ローラーを挟み込んでいます。
ローラーチェーンに油膜がない場合には、ブシュに摩耗が発生します。1つの摩耗は小さくても、数多くのリンクが連なっている場合、チェーンの伸びが大きくなるため注意が必要です。
注油が必要な場所
ローラーチェーンを例として、注油が必要な場所を確認していきましょう。
前述したように、ローラーチェーンは内リンクを2つの外リンクが挟み込む構造をしています。そのため、チェーン摩擦が発生しやすい以下のような箇所への注油が必要です。
- ピンとブシュの間
- ブシュとローラーの間
- 外プレートと内プレートの間
摩擦が生じるポイントに正しく注油できれば、摩擦を軽減させ騒音や振動などのトラブルを防いでくれます。ローラーチェーンに注油する際には、半固体状のグリースよりも細部に浸透しやすいオイルが用いられます。
ただし、注油したオイルが垂れや飛散すると、新たな問題を引き起こしかねません。潤滑剤の選定には、自社にとって適切か十分な検討が必要です。
ローラチェーンへの5つの注油方法
チェーンをスムーズに動かし、寿命を伸ばすうえで重要な工程であるローラーチェーンへの注油ですが「適切なやり方が分からない…」という方も少なくないのではないでしょうか?
そのような方のために、代表的なローラチェーンへの注油方法として、以下の5つを解説していきます。
- はけ塗り・油差しでの注油法
- 滴下給油法
- 油槽潤滑法
- ディスク潤滑(円盤潤滑)法
- 強制給油法
それぞれのポイントをご紹介しますので、自社の機械や使用状況にあった注油の仕方が知りたい方は、ぜひご確認ください。
方法①:はけ塗り・油差しでの注油法
この方法では、チェーンが緩んだ側の外側プレートと内側プレートの隙間にはけ塗りや油差しで人が直接、注油をします。1日1回を目安として、チェーン全体にオイルが浸透し、軸受部が乾燥しない程度に行いましょう。
なお、オイルの量が多すぎると、垂れや飛び散りが発生するため注意が必要です。
方法②:滴下給油法
滴下給油法は、チェーンにオイルカップを備え付け、プレートの隙間にオイルを滴下する方法です。上記のはけ塗り・油差しでの注油法に比べ、手間や時間の省力化が図れるのがメリットといえます。
ただし、環境温度やオイル面の高さにより滴下量が変わるため、定期的に滴下量の調整が必要です。また、オイルの飛び散りが発生しないように、囲いを設けるといった対策も必要となります。
方法③:油槽潤滑法
油槽潤滑法とは、オイルたまりの中にチェーンを通し、浸透させる方法です。オイル面が高いと攪拌された熱によりオイルの劣化が生じるため、チェーンが半分浸かる程度の量に調整しましょう。
また、オイルたまりのケース内に異物が混入しないよう、定期的な清掃も必要です。
方法④:ディスク潤滑(円盤潤滑)法
ディスク潤滑(円盤潤滑)法では、スプロケットをオイルに浸け、付着したオイルを跳ね飛ばすことでローラーチェーンに注油します。十分な油膜を形成するために、スプロケットの速度を180m/min以上に設定しましょう。
なお、ローラーチェーンの幅が125mm以上の場合には、ローラーチェーンの両側にスプロケットを取り付ける必要があります。
方法⑤:強制給油法
強制給油法とは、ポンプを使ってオイルたまりから吸入し、常にチェーンの緩み側にオイルを噴射する方法です。吸入部分にはオイル清浄機を、オイルの温度が上がる場合には冷却器を備え付けるなど対策が必要となります。
なお、ローラーチェーンを複数並べた「多列ローラーチェーン」を使用する場合は、噴霧管の給油穴をチェーン列数+1個設けましょう。
チェーンへの適切な注油頻度
「チェーンへの注油方法は理解したけど、どのくらいの頻度でメンテナンスが必要なの?」といった疑問をお持ちの方のために、チェーンへの適切な注油頻度について解説します。
現状、チェーンへの注油が必要な状態なのかを確認する方法もご紹介するので、ぜひ参考にしてください。
注油が必要なタイミングは一概にはいえない
チェーンが油切れを起こすタイミングは、さまざまな環境要因によって変化します。なお、おもな環境要因は以下の通りです。
- チェーンのリンク数
- 歯車の回転数
- 周辺温度
- 粉塵性(ホコリやゴミが多い環境)
- 油の粘度
- 荷重の大きさ
上記のような環境要因が重なり合うため、同じチェーンを使用していても、油切れまでの時間は同じとはいえません。チェーンの寿命を伸ばすためには、潤滑状態をこまめにチェックし、適宜、注油する必要があります。
注油状況を確認する方法
チェーンの注油状況を確認したい場合は、ピンとブシュが接触する箇所に光沢があるか目視でチェックしてください。光沢があれば注油状況が適正であり、光沢がなければ油膜のない状態であることを示します。光沢がない場合には、注油タイミングの見直しが必要です。
この時にチェーンにスラッジ(細かいチリと油が混ざったもの)や伸びが発生していないかも合わせて確認してください。スラッジがある場合には、チェーンを洗浄し、正しく取り付けた後、十分に注油します。
洗浄後は油膜が落ちている状態なため、速やかに注油や防錆処置が必要です。またこの際、チェーンの伸びが確認できた場合には、チェーン交換を検討してください。
注油するチェーンオイルの選定方法
注油するチェーンオイルは、以下の環境要因によってオイルの性質や粘度を変えなければいけません。
- 周辺温度
- チェーンの回転数
- 使用用途
例えば、食品工場で使用されている機械の、ローラーチェーンの場合を考えてみましょう。食品を加工・製造する工程の特性により、食品工場では高速かつ高温での使用になりやすい傾向にあります。
特に高温下での使用の場合は、スラッジが発生するリスクが高まります。そのため、スラッジを形成させない自浄作用があるオイルを選ぶのもおすすめです。
自浄作用があるオイルは、スラッジの混入を防ぎ、メンテナンスの時間や回数を減らしてくれるでしょう。食品工場でチェーンオイルを使用する場合は、潤滑性と安全性を兼ね備えたオイルの選定が求められます。
関連記事:食品機械に最適な潤滑油の選び方とは?種類と用途、規格について解説
まとめ
チェーンを守るためには、適切な注油とオイルの選定が必要です。適切な注油はチェーンの寿命を伸ばすだけではなく、摩擦や騒音など新たなリスクを防ぐ役割も期待できます。
近年ではチェーンオイルが製品に混入してしまい、リコールになる問題も発生しています。チェーンオイルの選定には、自社の業種に合っているか十分に検討してください。
食品の安全への意識が高まる昨今の状況では、食品機械用のチェーンオイルにも安全性が求められています。そのため、食品工場で使用するチェーンオイルは、万が一混入した場合でも問題のないチェーンオイルの選定が必要です。
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