潤滑油に防錆効果はある?防錆油との違いや種類別の特徴・選び方を解説
湿潤環境における機械潤滑を考えるうえで、無視できないのが潤滑油の防錆性能です。
錆が発生することで、製造機械や製品に対して悪影響をもたらす可能性もあるため、事前の予防策が必要となります。
しかし、自社の環境に適した防錆潤滑油の選定方法が分からない方も多いのではないしょうか。
そこで本記事では、潤滑油の防錆効果について詳しく解説します。防錆潤滑油の必要性や種類別の特徴、適切な選定方法も紹介するので、ぜひ参考にしてください。
潤滑油に防錆効果はある?
潤滑油はある程度錆の発生を防ぐ効果を備えています。
潤滑油の本来の機能は、機械部品の接触面に油膜を作り、摩擦や摩耗による劣化を防ぐことです。
金属部品に形成された油膜は、物理的な摩擦だけでなく、空気や水分との接触も防ぎます。
錆はおもに水分や空気に金属が触れることで進行するため、潤滑油の使用によって、ある程度の防錆効果に期待できるでしょう。
ただし、潤滑油は防錆を目的に作られたオイルではないため、場合によっては錆止めの効果を十分に発揮できない可能性もあります。
なかには、高い防錆効果を備えている製品もありますが、大前提として使用環境や用途に適した性能の潤滑油を選定することが重要です。
防錆油と潤滑油の違い
防錆油とは、文字通り防錆効果に特化したオイルのことです。
一方、潤滑油は機械部品の摩擦や摩耗を軽減する潤滑性能に特化しています。
なお、防錆油のなかには潤滑性能を備える製品もあります。
前述した通り、潤滑油のなかにも高い防錆性能を備える製品は存在するため、その定義は明確ではありません。
潤滑と防錆のどちらを重視しているかによって、名称が変わる場合が多く、両方の性能を備えるオイルを「防錆潤滑油」と呼ぶケースもあります。
防錆潤滑油の必要性
ここからは、以下の観点から、防錆潤滑油の必要性について詳しく解説します。
- 金属が錆びるおもな原因
- 錆がもたらすデメリット
- 防錆効果の高い潤滑油の働き
錆の原因や被害、潤滑油の働きを正しく理解したうえで、自社でも防錆潤滑油を活用すべきか判断しましょう。
金属が錆びるおもな原因
金属が錆びるおもな原因は、酸素と水です。
空気中に含まれる酸素や水分が金属の表面に触れ、酸化が進行することで錆は発生します。
また、もらい錆も金属が錆びる原因の一つです。
錆によって発生した酸化鉄が雨水や風によって運ばれ、ほかの金属部分に付着すると、新たに錆が発生する可能性があります。
加えて、燃料や洗剤などに含まれる化学物質と金属が反応し、錆を形成するケースも考えられます。
特に、硫黄化合物や塩化物は金属に触れることで、酸化反応が促進されるため、錆や腐食の原因になるでしょう。
錆がもたらすデメリット
自社機械の駆動部分に錆が生じると、以下のようなデメリットがあります。
- 金属の耐久性が下がる
- 金属部品のスムーズな動作が妨げられる
- 錆や金属片が製品に混入するリスクがある など
鉄の腐食現象である錆が進行すると、金属の強度や耐久性が低下するため、機械トラブルや故障の直接的な原因になります。
錆が生じた金属表面には油膜も形成しづらいため、機械部品のスムーズな動作を妨げ、潤滑箇所の摩耗や劣化も早まるでしょう。
また、金属表面から剥がれ落ちた錆の欠片や鉄片が製品に混入するリスクも考えられます。
異物混入によってクレームなどが生じた結果、自社の利益や信頼性を損なう事態になりかねません。
上記のようなトラブルを避けるためにも、錆の発生を予防し、進行を止めるための対策が必要でしょう。
防錆効果の高い潤滑油の働き
防錆効果が高い潤滑油のおもな働きは、金属表面に油膜を形成することです。
油膜によって酸素や水分、化学物質の接触を防ぐことで、金属の酸化反応を防止します。
また、油分によって金属表面に付着している水分や、塩化物を含む指紋を除去する作用も備えています。
金属表面に原因物質を付着させず、洗浄度を維持することで、錆の発生や進行を防いでいるのです。
なお、JAXJAPANでは、防錆性能や耐水性の高い潤滑油を複数提供しています。
錆のリスクを最小限に抑えられる潤滑油をお探しの方は、ぜひ以下のラインナップをご確認ください。
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【種類別】防錆潤滑油の特徴
ここからは、防錆潤滑油の種類ごとにそれぞれの特徴を解説します。
- 指紋除去形
- 溶剤希釈形
- ペトロラタム形
- 潤滑油形
- 気化性
自社の潤滑環境に適した防錆潤滑油を選定するためにも、種類ごとの特徴とおもな活用シーンを把握しておきましょう。
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種類①:指紋除去形
指紋除去形とは、機械部品などの金属表面に付着する指紋を取り除く働きを持つ防錆潤滑油です。
JIS規格では「NP-0」に分類され、低粘度の油膜を形成するのが特徴です。
形成された油膜によって、指紋に含まれる汗の成分(塩分や尿素、脂肪など)を溶解・中和し、錆の発生を防止します。
金属表面の洗浄がおもな機能なので、長期的な錆予防というより、短期的な対策に活用されるケースが一般的です。
種類②:溶剤希釈形
溶剤希釈形とは、石油系の溶剤で錆止め効果のある添加剤を希釈した防錆潤滑油です。
溶剤が揮発した後、金属表面に残る添加剤の膜によって錆止めを行います。
なお、溶剤希釈形は以下の種類に分類されます。
JIS規格における分類 | 油膜の状態 | おもな特徴・用途 |
NP-1 | 硬質膜 | 屋内外で使用 |
NP-2 | 軟質膜 | 屋内向け |
NP-3-1 | 軟質膜 | 屋内向け 水置換性(金属表面に付着した水分を除去・洗浄する性能)を備える |
NP-3-2 | 中高粘度油膜 | |
NP-19 | 透明、硬質膜 | 屋内外で使用 |
上記のように形成する油膜の状態によって、使用する場所や防錆効果を発揮する期間が異なるのが特徴です。
一般的に軟質膜は中期的な錆止めに適しており、硬質膜は長期的な防錆効果を発揮する傾向があります。
種類③:ペトロラタム形
ペトロラタム形は、ペトロラタムやワックスなどを主成分とする防錆潤滑油です。
JIS規格では「NP-6」に分類され、軟膜質でありながら防錆性能の高い厚めの油膜を形成します。
ペトロラタム形の防錆潤滑油は、転がり軸受などの高度な仕上げ面におけるさび止めに使用されるのが一般的です。
また、溶剤を含まないため、出火リスクの高い高温下などでも使用しやすいでしょう。
種類④:潤滑油形
潤滑油形は、常温で液状のスタンダードな防錆潤滑油です。
なお、潤滑油形は以下の種類に分類されます。
JIS規格における分類 | 油膜の状態 | おもな特徴・用途 |
NP-7 | 中粘度油膜 | 金属製品や材料に使用 溶剤を含まないため引火のリスクが低い |
NP-8 | 低粘度油膜 | |
NP-9 | 低粘度油膜 | |
NP-10-1 | 低粘度油膜 | 機械本体や内部の部品などに使用 溶剤を含まないため引火のリスクが低い |
NP-10-2 | 中粘度油膜 | |
NP-10-3 | 高粘度油膜 |
汎用性が高く、ほかの種類と比較して使用方法が簡単かつ、洗浄もしやすいため、使いやすい防錆潤滑油といえます。
種類⑤:気化性
気化性の防錆潤滑油は気化することで、おもに密閉空間における錆の発生を防ぐオイルです。
なお、気化性の防錆潤滑油は、以下の種類に分類されます。
JIS規格における分類 | 油膜の状態 | おもな特徴・用途 |
NP-20-1 | 低粘度油膜 | 密閉空間内で使用 |
NP-20-2 | 中粘度油膜 |
気化するといっても溶剤は含まないため、引火の危険性は低いのが特徴です。
防錆潤滑油の選び方
防錆潤滑油を選ぶ際は、以下の項目を重視しましょう。
- 使用目的
- 防錆期間
- 防錆工程
- 塗布方法
- 保管環境 など
前述した通り、さまざまな種類の防錆潤滑油が提供されているため、自社の環境や使用目的を考慮したうえで、最適な性能を備える製品を選ぶことが大切です。
また、上記の項目以外に、特殊な性能が必要とされるケースも考えられます。
例えば、食品製造工場で使用する防錆潤滑油の場合、安全性が求められます。
防錆潤滑油が製造する食品に混入するリスクが少しでもある限り、たとえ消費者の口に入っても人体への影響が少ない成分のオイルを使用しなければなりません。
自社製品の安全性を確保するためにも、JAXJAPANが提供する「NSF H1規格」の潤滑油を使用することをおすすめします。
自社製品への異物混入リスクを最小限に押さえたい方は、ぜひ「NSF H1」の詳細をご確認ください。
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食品工場でも使用できる防錆潤滑油をお探しの方へ
食品工場でも使用できる安全性の高い防錆潤滑油をお探しの方は、ぜひJAXJAPANが提供する「NSF H1規格」の潤滑油をお試しください。
アメリカ食品医薬品局(FDA)が認定した安全性の高い原材料のみを使用しているうえに、潤滑性能も高いため、ハイレベルな安全管理と設備管理を両立できます。
そのうえ、耐水性や防錆性能も高いため、湿潤環境において潤滑性能を維持しつつ、自社機械を脅かす錆の発生を予防できるでしょう。
チェーンオイルやグリース、油圧作動油など、幅広い用途や環境に適用可能な潤滑油を取り揃えているので、自社にとって最適な性能を持つ商品をお探しの方は、下記の「商品ラインナップ」をご確認ください。
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