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その他潤滑油 2023.10.19(Thu)

ベアリングのオイル潤滑とグリス潤滑の違いとは?選び方の基準を解説

ベアリングのオイル潤滑とグリス潤滑の違いとは?選び方の基準を解説

機械部品を滑らかに回転させるために使用される「ベアリング」。自動車や電車などの乗り物から工業機械まで、幅広い機械のスムーズな動作を手助けしています。

 

なお、ベアリングが滞りなく動作するためには、回転部の潤滑が必要不可欠です。

 

しかし、一口に潤滑と言ってもさまざまな手法が存在するため、自社機械に最適な方法や潤滑剤の選定基準が分からない方も少なくないのではないでしょうか。

 

本記事では、代表的なベアリングの潤滑方法である「オイル潤滑」と「グリス潤滑」の違いを解説します。

 

それぞれの方法の特徴や潤滑剤の選び方もご紹介するので、ぜひ参考にしてください。

 

ベアリング潤滑を行う3つの目的

 

ベアリング潤滑を行うおもな目的として、以下の3点が挙げられます。

 

  1. 摩擦・摩耗の減少
  2. 摩擦熱の排出・冷却
  3. 防錆・防塵

 

ベアリング潤滑の重要性を正しく把握するためにも、3つの目的を確認しておきましょう。

目的①:摩擦・摩耗の軽減

ベアリングを潤滑する最大の目的が、摩擦・摩耗の軽減です。

 

一般的にベアリングは、軌道輪と呼ばれる内輪・外輪と転動体(ボール)の3層構造になっています。

 

外輪を固定し、内輪に機械の軸をはめ込んだ状態で、内部の転動体が回転することによって、部品全体を滑らかに回転します。

 

しかし、ベアリング内部では転動体が回転し続け、軌道輪と接触するため摩擦・摩耗の発生は避けられません。

 

そのため、潤滑剤によって油膜を形成し、転動体と軌道輪の直接的な接触を防ぐ必要があります。

 

ベアリングの潤滑が十分であれば、転動体と軌道輪の摩耗による変形や損傷を防げるため、疲れ寿命の延長にもつながります。

目的②:摩擦熱の排出・冷却

ベアリングを潤滑する目的の一つとして、摩擦熱の排出・冷却も挙げられます。

 

ベアリング内部では、転動体と軌道輪が繰り返し荷重を受けるため、摩擦熱が発生しやすいです。

 

また、回転部の摩擦熱が蓄積し続けると、金属の変形や劣化が生じ、スムーズな動作を妨げてしまう可能性もあります。

 

ベアリングに潤滑剤を使用することで、蓄積された摩擦熱を排出し、ベアリングの構成パーツを冷却できます。

 

ただし、常に発生する摩擦熱を効果的に排出するには、新しく冷やされた油の継続的な供給が必要です。

目的③:防錆・防塵

防錆・防塵もベアリングを潤滑する目的の一つです。

 

金属に錆や腐食が発生するおもな原因として、酸素や水分との接触による酸化が挙げられます。

 

潤滑剤は金属部分に油膜を形成することで、酸素や水分の直接的な接触を防ぎ、錆や腐食の発生を予防します。

 

また、潤滑剤はベアリング内部に混入した塵やゴミなどの異物の排除にも効果的です。

 

ただし、粘度の高いグリスの場合、異物の排除・ろ過効果にはあまり期待できないため、用途や使用環境に適した製品選びが重要です。

ベアリングにおける「オイル潤滑」と「グリス潤滑」の違い

 

ベアリングを潤滑する際、おもに以下の2つの方法があります。

 

  1. オイル潤滑
  2. グリス潤滑

 

使用する潤滑剤の特徴やおもな潤滑方法について解説します。

ベアリングの潤滑方法①:オイル潤滑

オイル潤滑とは、液体の潤滑油をベアリングの内部に滴下・塗布する方法です。

 

なお、オイル潤滑には以下のような特徴があります。

 

潤滑方法 オイル潤滑の特徴
潤滑性能 非常に高い
回転速度 高速回転にも対応可
潤滑剤の交換 容易
潤滑剤の寿命 長い
密封装置 やや複雑
オイルのしみ出しや漏れに注意が必要
冷却効果 熱を効果的に放出できる(循環が必要)
ごみのろ過 容易
潤滑剤の漏れ汚染 汚染を嫌う箇所には不向き

オイル潤滑は基本的な潤滑性能が高く、高速回転やある程度の高温下にも適しているのが特徴です。

 

加えて、振動や音響の低下にも効果を発揮するため、おもにグリス潤滑では対応できない環境下で使用されます。

潤滑油の特徴

潤滑油とは、粘度の低い液体の潤滑剤であり、おもに以下の成分で構成されています。

 

  • ベースオイル(基油):80〜90%
  • 添加剤:10〜20%

 

基本的な性能を決めるベースオイルに、用途や使用環境に応じた添加剤を調合することで、潤滑油の性能が決まります。

 

なお、潤滑油のベースオイル・添加剤については下記の記事で詳しく解説しているので、合わせてご確認ください。

 

【関連記事】ベースオイルとは?潤滑剤に使用されるおもな種類・成分と役割を解説

【関連記事】潤滑油添加剤とは?9つの種類別に特徴や成分、用途・役割を徹底解説

オイル潤滑のおもな方法

オイル潤滑のおもな方法として、以下のようなものが挙げられます。

 

潤滑方法 概要
油浴潤滑 ・ベアリングを油に浸した状態で運転する潤滑法

・おもに低速、中速回転の箇所に使用される

滴下給油 ・給油機によって潤滑油を滴下する方法

・比較的、高速回転の箇所にも使用可能

飛沫給油 ・潤滑油を飛沫にして給油する方法

・比較的、高速回転の箇所にも使用可能

強制循環給油 ・循環式の給油法

・給油された潤滑油は排油管を通ってタンクに戻り、ろ過と冷却が行われる

・高速回転や高温条件下で使用される

ジェット給油 ・ノズルから潤滑油を噴出し、給油する方法

・冷却効果が高い

・おもに高速・高荷重下で使用される

オイルミスト潤滑(噴霧潤滑) ・霧状のオイルを含んだ空気を給油箇所に送る方法

・その後、ベアリングに設けたノズルによって、付着しやすい油の粒にして潤滑を行う

オイルエア潤滑 ・潤滑油と圧縮空気を混合し、ベアリングに供給する方法

・高速回転の箇所に適している

それぞれ使用条件が異なるため、自社の環境・用途に適した潤滑方法を取り入れることが重要です。

ベアリングの潤滑方法②:グリス潤滑

グリス潤滑とは、固体または半個体のグリスをベアリングの内部に塗布する方法です。

 

なお、グリス潤滑には以下のような特徴があります。

 

潤滑方法 グリス潤滑の特徴
潤滑性能 高い
回転速度 低速・中速(許容回転数は潤滑油の65〜80%)
潤滑剤の交換 やや複雑
潤滑剤の寿命 比較的短い
密封装置 簡略化可能
冷却効果 なし
ごみのろ過 困難
潤滑剤の漏れ汚染 漏れによる汚染が少ない

基本的な潤滑性能はオイル潤滑に劣りますが、グリス潤滑ではベアリングの構造を簡略化できるのが特徴です。

 

ベアリングには外部からのゴミや水分、金属粉など有害な物質の侵入と、潤滑剤の漏れを防ぐために密閉装置が組み込まれています。

 

液体の潤滑油を使用するオイル潤滑の場合、やや複雑な密閉装置が必要となりますが、グリス潤滑の場合は比較的簡易な構造でも対応可能です。

グリスの特徴

グリスとは、粘度の高い固体、または半個体の潤滑剤であり、おもに以下の成分で構成されています。

 

  • ベースオイル(基油):80~90%
  • 増ちょう剤:3~15%
  • 添加剤:0.5~10%

 

グリスには、基本的な性能を決めるベースオイルに、粘度を高めるための増ちょう剤と用途に応じた性能を付与する添加剤が調合されています。

 

なお、ベースオイルだけでなく、使用されている増ちょう剤の種類・成分もグリスの性能を大きく左右します。

 

グリスの特徴や種類について詳しく知りたい方は、下記の記事も合わせてご確認ください。

 

【関連記事】グリースとは?潤滑油との違いや求められる5つの性能、種類を徹底解説

グリス潤滑のおもな方法

グリス潤滑のおもな方法として、以下のようなものが挙げられます。

 

  • ベアリング内にあらかじめグリスを封入した「密封方式」
  • 一定期間ごとにグリスを補給・交換する「充填給脂法」
  • 潤滑箇所に配管を通し、グリスを給脂する「集中給脂法」

 

なお、一般的なグリスの充填量は、空間容積の1/3〜1/2程度が目安です。

 

充填量が多すぎると熱が発生し、グリスの劣化や変質が生じる可能性もあるため、容量には注意しなければなりません。

 

また、グリスを交換・補給する際は、ゴミや水分が混入しない環境で清浄な製品を使用するように心がけましょう。

ベアリングの潤滑に最適なオイル・グリスの選び方

 

ベアリングの潤滑に適した潤滑剤の選び方をご紹介します。
潤滑油とグリス、それぞれの選定方法を解説するので、自社機械に使用する潤滑剤の選定にお悩みの方はぜひ参考にしてください。

オイルの選び方

ベアリングの潤滑に使用する潤滑油を選定する際は、以下の項目に注目しましょう。

 

  • 運転温度において適切な粘度を維持できるか
  • 用途に対して十分な耐荷重性能を備えているか
  • 酸化安定性を備えているか
  • 防錆・防食性能を備えているか など

 

なお、上記の項目を判断するには、基盤となるベースオイルと含有している添加剤の種類を確認しましょう。

グリスの選び方

ベアリングの潤滑に使用するグリスを選定する際は、以下の項目に注目しましょう。

 

  • 滴点・使用可能温度は何度か
  • 用途に対して許容回転数は適切か
  • 用途・環境に適したちょう度か
  • 用途に対して十分な耐圧性能を備えているか など

 

他にも、耐水性や機械的安定性の有無など、使用環境に適した性能のグリスを選ぶ必要があります。

 

含有しているベースオイルと増ちょう剤、添加剤の成分をしっかり確認し、自社の用途・環境に最適なグリスを選定しましょう。

 

なお、食品工場の機械に使用する場合、上記に加えて製品への混入リスクを考慮した安全性の高いグリスが必要です。

 

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