潤滑油の正しい使い方とは?最適なオイルの選び方や給油方法について解説
機械のスムーズな動作を実現するために幅広い産業で活用されている「潤滑油」。
自社機械の生産性維持やメンテナンスコストを削減するために、定期的な潤滑管理を心がけている方も多いのではないでしょうか。
ただし、潤滑油にはさまざまな種類が存在し、用途や性能が異なるため、適切な製品を正しい用途で使用することが重要です。
本記事では、潤滑油の正しい使い方について解説します。
潤滑油の選定方法やおもな給油方法についてもご紹介するので、自社にとって最適な潤滑環境を実現するための参考にしてください。
潤滑油の正しい使い方
潤滑油の正しい使い方として、意識するべき3つのポイントを紹介します。
- 用途に合った潤滑油を給油する
- 漏れ防止を徹底する
- 劣化対策を行う
どれだけ高性能な潤滑油を使用したとしても、使い方を誤っていれば、高い効果には期待できません。
自社機械の安全性向上と高寿命化を実現するためにも、ご紹介する3つのポイントを把握しておきましょう。
使い方①:用途に合った潤滑油を給油する
第一に用途に合った潤滑油の給油が重要です。
具体的には、以下の5つのポイントを意識して適切な潤滑管理を行いましょう。
- 潤滑油の種類
- 使用する潤滑油の量
- 潤滑周期
- 潤滑油を使用する場所・環境
- 潤滑方法
用途に合った性能の潤滑油を選定するのはもちろん、使用する量や周期についても正しく把握しておくべきです。
また、潤滑油にはいくつかの給油方法があり、それぞれ潤滑箇所の向き・不向きや使用量、周期が異なります。
機械の生産性向上とコストの維持を実現するためにも、使用環境・用途に適した無駄の少ない潤滑油選びを心がけましょう。
使い方②:漏れ防止を徹底する
潤滑油を使用するうえで、漏れ防止も意識しなければいけないポイントです。
なお、潤滑油の漏れが発生するおもな原因としては、以下のケースが考えられます。
- 用途に適した潤滑油を選定できていない
- 潤滑方法が適切でない
- 配管やタンクに不備がある
潤滑条件に対して、適切な粘度の潤滑油や潤滑方法を選定できていないと、うまく油膜を形成できず、漏れ出してしまう可能性があります。
ほかにも、配管のつまりやつなぎ目のゆるみ、タンクの劣化や転倒によって油が漏れ出すケースもあるため、潤滑装置全体の点検が必要です。
使い方③:劣化対策を行う
潤滑油を使用する際は、劣化対策も意識しましょう。
なお、潤滑油が劣化するおもな原因は以下の通りです。
- 水分の混入
- 空気中の酸素との接触
- 摩耗粉やゴミなど不純物の混入
潤滑油が劣化してしまうと、本来の性能を発揮できなくなるため、空気や異物と接触しないような密閉空間での使用が望ましいです。
なお、酸化や乳化など劣化を防ぐための添加剤が含まれている潤滑油も開発されているため、使用するのも対策の一つといえるでしょう。
潤滑油の種類
一口に潤滑油と言っても、数々の種類が存在し、それぞれ用途や含有成分が異なります。
そのため、高い潤滑効果を期待するなら自社の用途・環境に合わせて最適な潤滑油を選定する必要があります。
用途と成分別に潤滑油の種類をご紹介するので、潤滑油を選定する際にご活用ください。
【用途別】潤滑油の種類
用途別の代表的な潤滑油の種類は、以下の通りです。
潤滑油の種類 | おもな用途・特徴 |
マシン油 | ・機械の軸受や摩擦部分に使用
・用途が幅広い ・おもに精製鉱油が原料で添加剤を含まない |
スピンドル油 | ・小型電動機や紡織機械などの高速回転する軸受に使用
・粘度と荷重が低い |
タービン油 | ・蒸気、水力タービンなどの高速回転する軸受に使用
・酸化防止剤や消泡剤などの添加剤を含む製品も多い |
シリンダー油 | ・蒸気機関の弁やシリンダーなどに使用
・高粘度で高温・高負荷にも耐えられる |
軸受油 | ・機械の軸受(ベアリング)に使用
・耐摩耗性と酸化安定性、防錆性が高い |
チェーンオイル | ・工業用機械のチェーンに使用
・耐摩耗性と酸化安定性が高い |
コンプレッサーオイル | ・コンプレッサーに使用
・抗乳化剤や酸化安定剤などの添加剤を含む製品も多い |
ギヤ油 | ・機械の歯車や各種ギヤに使用
・極圧剤を添加した耐摩耗性や焼きつき防止効果の高い製品が多い |
油圧作動油 | ・油圧装置の動力を伝える媒体として使用
・比較的、低粘度の製品が主流 |
摺動面(しゅうどうめん)油 | ・工業機械の摺動面(スライドして動く接触面)に使用される
・振動、摩擦への耐性や酸化安定性、防錆性に優れる |
なお、チェーンオイルとコンプレッサーオイル、油圧作動油に関しては、下記の記事で詳しく解説しているので合わせてご確認ください。
【関連記事】チェーンオイルの必要性とは?おもな役割と代表的な種類・特徴を解説
【関連記事】コンプレッサーオイルとは?粘度別の種類や交換の目安・適正量を解説
【関連記事】油圧作動油とは?おもな種類や粘度の違いを解説
また、JAX JAPANでは、高い潤滑性能と食品機械にも使用できる安全性を兼ね備えた潤滑油を取り扱っています。
幅広い用途・環境に対応できる粘度、性能の潤滑油をご用意していますので、自社で使用する潤滑油にお悩みの方は、ぜひ導入をご検討ください。
【成分別】潤滑油の種類
潤滑油はおもに以下の2種類の成分で構成されています。
- ベースオイル(基油):80〜90%
- 添加剤:10〜20%
ベースオイル(基油)は、潤滑油の主成分となる油であり、原料によって性能が大きく異なります。
おもに石油を精製して作られる「鉱油」と、化学合成によって製造される「合成油」に分けられ、含まれている化合物によって、潤滑油の基本性能が決まります。
なお、潤滑油のベースオイル(基油)の役割や成分別の種類について詳しく知りたい方は、以下の記事も合わせてご確認ください。
【関連記事】ベースオイルとは?潤滑剤に使用されるおもな種類・成分と役割を解説
潤滑油に含まれている添加剤の種類
潤滑油には、おもに以下のような種類の添加剤が含まれています。
- 耐荷重添加剤
- 清浄分散剤
- 酸化防止剤
- 粘度指数向上剤
- 流動点降下剤
- 腐食防止剤
- 錆び止め剤
- 抗乳化剤
- 消泡剤 など
潤滑油の性能は、基本性能を決めるベースオイルにどのような効果を持つ添加剤を組み合わせるかで決まります。
各種添加剤の機能や成分について詳しく知りたい方は、下記の記事も合わせてご確認ください。
【関連記事】潤滑油添加剤とは?9つの種類別に特徴や成分、用途・役割を徹底解説
潤滑油の選び方のポイント3選
自社機械に使用する潤滑油を選定する際は、以下の3つのポイントを重視しましょう。
- 使用条件を合わせる
- 既存の潤滑油との相性を考える
- 選定した潤滑油で問題ないか確認する
それぞれのポイントを具体的に解説するので、潤滑油選びでお悩みの方は、ぜひ参考にしてください。
ポイント①:使用条件を合わせる
潤滑油を選定する際は、使用条件を合わせる必要があります。
具体的には、以下の4つの項目から使用するオイルの性能を決定しましょう。
- オイルの種類
- 使用温度範囲
- 適性粘度
- 接触部の周速
まずはチェーンオイルやギヤ油など、潤滑する機械や箇所に合わせてオイルの種類を選定します。
次に潤滑部位の温度変化を把握し、対応できる使用温度範囲を持つ潤滑油を選定してください。
その後、機械メーカーが推奨する潤滑油の粘度を確認し、適切な潤滑油を選びましょう。
また安定した油膜を形成し、泡立ちを防止するためには、潤滑部位の回転数や相対速度に対応可能な潤滑油が必要です。
なお、機械メーカーから推奨されている潤滑油がある場合は、その製品の性能を確認することで、簡単に使用条件の傾向を把握できます。
ポイント②:既存の潤滑油との相性を考える
潤滑油の交換・補給の際は、既存の製品との相性も考えなければなりません。
性能がかけ離れた潤滑油が混合してしまうと、ベースオイルや添加剤に含まれている成分が反応し、劣化してしまう可能性もあります。
なお、たとえ潤滑油の性能が類似していても、メーカーが違えば含まれている成分や化合物は異なります。
成分同士が反応し合う可能性は否定できないため、潤滑油の交換・補給の際は、銘柄・性能が異なるオイルの継ぎ足しは極力、避けた方が無難です。
ポイント③:選定した潤滑油で問題ないか確認する
選定した潤滑油を給油した後は、必ず問題がないか確認しましょう。
なお、給油後のチェック項目は以下の通りです。
チェック項目 | 想定される異常 |
オイルの温度 | ・金属の摩耗、焼きつき
・ベアリングの動作異常、寿命低下 ・オイルの劣化進行 |
オイルの液面レベルの高さ | ・オイルの温度上昇
・オイルの劣化進行 |
オイル中の鉄粉濃度 | ・金属の摩耗 |
オイルの色 | ・白濁:周速が適合していないまたは、水分が混入している
・茶褐色:酸化によるオイル劣化 |
上記のような異常を予防するためにも、オイルだけでなく潤滑部位の状態も定期的に確認しましょう。
潤滑油のおもな給油方法
潤滑油の給油方法は、おもに以下の2種類に分かれます。
- 自動給油機の使用
- 刷毛を使用した手動給油
それぞれの給油方法の概要を解説します。
方法①:自動給油機の使用
自動給油機とは、自動的に潤滑油を適時・適量供給するための機械です。
なお、自動給油機にはおもに以下の2種類に分かれます。
- 潤滑に使用したオイルを回収しない「全損式」
- 潤滑に使用したオイルを循環させて再利用する「反復式(回収式)」
自動給油機の形状は、点滴のような簡易的な構造のものから、タンクやろ過・冷却装置が付属した大掛かりなものまでさまざまです。
また、使用する機械によって、給油するオイルの状態もさまざまで、液状だけでなく霧状や飛沫として潤滑部位に散布する方法もあります。
設備費や保全費といったコスト面も考慮しつつ、自社の用途に適した自動給油機を導入しましょう。
方法②:刷毛(はけ)を使用した手動給油
潤滑油を手動で給油する場合は、刷毛(はけ)や油差しを使用するのが一般的です。
使用する潤滑油の性能や使用環境にもよりますが、1日1回を目安に、潤滑箇所全体にオイルを浸透させましょう。
オイルの量が少なすぎると潤滑面が乾燥し、金属部品に摩擦が発生しやすくなります。
ただし、多すぎてもオイルの垂れや飛び散りが発生しやすくなるため、少しずつ調整しながら適量を塗布しましょう。
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