潤滑油分析の重要性とは?おもな目的と測定方法、劣化診断について解説
機械の動作を助け、摩擦や損傷から保護する役割を担う「潤滑油」。
自社工場における生産性の維持や設備コストを削減するうえで、なくてはならないものです。
しかし、一口で潤滑油といってもさまざまな種類が存在するため、自社に最適な製品を判断できない方も多いのではないでしょうか。
そのような場合の解決策となるのが、「比較分析」です。
本記事では、比較分析について詳しく解説します。
分析の目的や測定方法、劣化診断についてもお伝えしますので、自社機械に最適な潤滑油を見つけるためにお役立てください。
比較分析の重要性とは
潤滑油は機械がスムーズに動作するうえで、必要不可欠なものです。
しかし、使用する潤滑油の性能と使用環境が一致しない場合、急速な劣化が発生し、本来の性能が発揮できなくなります。
その結果、潤滑油は、チェーンを保護することができなくなり、異音や故障の可能性が高まります。
防止するためには、使用環境に合った潤滑油を適正な状態に維持することが必要です。
また、「潤滑管理(オイルマネジメント)」の観点から、使用中の潤滑油を分析し、金属片の混入、酸化劣化、変質を調査することもポイントです。
- 環境に最適な潤滑油の選定をしたい。
- 潤滑油の交換間隔や注油頻度を定めたい。
目的によって、分析方法が異なります。
潤滑油選定 2種類の分析
主な分析をご紹介します。
- 熱重量分析
- 四球摩耗分析
種類①:熱重量分析
熱重量分析では、分析をかける対象物を一定条件下で加熱した場合の重量変化を測定します。
具体的には、以下のような重量変化を伴う物理的、または化学的な性質変化を測定します。
- 蒸発
- 分解
- 酸化、還元
- 吸着 など
また、上記以外に転移、結晶化など、重量変化を伴わない一部の性質変化についても測定可能です。
熱重量分析によって、どのような条件下で潤滑油の性質が変化し、重量や形状がどう変わるかなど、物質としての特性が明確になります。
その結果、潤滑油の含有成分や熱安定性、反応性などを評価できます。
種類②:四球摩耗分析
四球摩耗分析とは、4つの球で構成された試験装置を使用し、潤滑油の耐荷重性能と耐摩耗性能を測る分析方法です。
試験装置は、1つの回転球と3つの固定球で構成されており、回転球に荷重をかけることで発生するトルクと摩耗痕の大きさを評価します。
その結果、分析した潤滑油の使用に適した環境・条件や寿命、適切な油交換の間隔などが分かります。
潤滑油選定 3つの目的
分析は、主に3点を確認します。
- 長持ちするか
- 変化に強いか
- 金属摩耗を防いでくれるか
目的①:長持ちするか
潤滑油が長持ちするのかは、コストに影響しますので皆さんが気になる点だと考えます。
長持ちする潤滑油=温度上昇によって蒸発しにくい潤滑油
これを定義とした場合、高温環境でも極端に潤滑油の重さが変わらなければ、蒸発していないので、長持ちする潤滑油と判断できるでしょう。
また、潤滑油がどの程度の温度まで潤滑性能を保てるのかを調べることで、適切な使用温度を把握することができます。
蒸発しやすい潤滑油の場合、潤滑油の交換、注油間隔が短くなるため、コストと手間がかかることは容易に想像することができます。
目的②:変化に強いか
オイル分析では、潤滑油の劣化しやすさも評価します。
潤滑油の劣化しやすさが明確になれば、オイル交換のタイミング・周期の目処が立ちやすいです。
また、どのような要因で劣化が進むのかを分析することで、潤滑油の特性や適切な使用環境が分かります。
目的③:摩耗のダメージを防いでくれるか
オイル分析では、摩耗のダメージへの対応力も評価します。
分析対象の潤滑油が、どの程度の圧力・摩擦力にどれだけの時間耐えられるかを評価することで、最適な潤滑条件が分かります。
潤滑部分の摩擦・摩耗ダメージの軽減は、潤滑油の基本性能といえるため、しっかり確認しておくべき項目といえるでしょう。
オイル分析のおもな測定方法
オイル分析のおもな測定方法として、以下の4点をご紹介します。
- 粘度測定
- 耐摩耗性測定
- 熱重量測定
- スラッジ測定
それぞれの測定方法の詳細を確認しておきましょう。
方法①:粘度測定
潤滑油の粘度測定は、オイル分析のなかでも重要度の高い項目といえます。
なお、潤滑油の粘度測定では「動粘度」を調べるのが一般的です。
動粘度とは流体の粘性を示す値であり、動きの伝わりやすさを意味します。
動粘度測定では、一定の条件下でオイルが流れ落ちる時間を計測します。
その際、温度や重力、オイルの量、流れ落ちる距離などの計測条件を揃えるために「動粘度測定装置」を使用するのが一般的です。
同じ条件下で潤滑油が流れ落ちるのに要した時間を基に、動粘度を算出します。
潤滑油の粘度や選定方法について、詳しく知りたい方は下記の記事も合わせてご確認ください。
【関連記事】潤滑油の粘度とは?これを知れば、適切な潤滑油の選定ができます!
方法②:耐摩耗性測定
耐摩耗性測定では、潤滑油の摩擦・摩耗特性を調べます。
おもな耐摩耗性測定の方法としては、以下のようなものが挙げられます。
- 四球摩耗分析
- 振子式摩擦試験
- バウデンレーベン試験
- BP(ボールプレート)試験 など
耐摩耗性測定では、2つ以上の物質の運動によって発生する摩擦痕や摩擦抵抗の増減を測定するのが一般的です。
なお、摺動部(しゅうどうぶ)の摩擦によるエネルギーロスや摩耗の軽減は潤滑油の最も基礎的な役割です。
したがって、耐摩耗性測定は潤滑油としての基本性能を評価するための分析・試験といえるでしょう。
方法③:熱重量測定
熱重量測定では、潤滑油を一定の時間をかけて冷却・加熱した場合、または一定の温度を維持した場合の重量変化を測定します。
なお、具体的な方法としては、天秤を用いて重量の変化を測定するのが一般的です。
天秤の上、または端に設置された試料台に分析するオイルと基準物質を載せ、熱分解などの温度変化によって重量が変化すると天秤が傾く仕組みになっています。
そして、元の天秤が均衡している状態に戻すために必要な電流値、エネルギー量などから質量差の数値を算出します。
方法④:スラッジ測定
スラッジ測定は、おもに潤滑不良の原因を明らかにするために行われます。
スラッジ測定の具体的な流れは、以下の通りです。
- 有機溶媒によって脱油を行う
- 分離した成分を分析する
- 分析結果を基にスラッジの発生原因を特定する
ちなみに、スラッジのおもな発生原因としては、以下のようなケースが挙げられます。
- 使用している潤滑油が適正でない
- 潤滑条件が過酷すぎる
- 外部から水分や異物が混入した など
スラッジを分析し、潤滑不良の原因を特定することで、潤滑油や機械が長持ちするための具体的な対策方針を決定できます。
なお、スラッジの発生にお困りの方は、自浄作用の高いJAX製品の使用もおすすめです。
スラッジや自浄作用の詳細については、下記の動画で解説していますので合わせてご確認ください。
オイル分析における劣化診断
オイル分析は現在、機械に使用されている潤滑油に対しても行われます。
使用中の潤滑油の劣化状況を定期的に診断することで、油交換の時期や機械の故障・損傷を事前に察知できます。
なお、潤滑油の定期診断では、以下のような項目を分析するのが一般的です。
- 動粘度
- 全塩基価(オイルのアルカリ値)
- 清浄度(不純物や摩耗粉の量や成分)
- 含水量 など
例えば、動粘度を測定した結果、粘度が想定より高い場合は以下のような要因が考えられます。
- 油の酸化
- 熱による性質変化
- 水またはグリコールによる汚染
- すすの混入 など
その後、全塩基価や清浄度などの項目を分析し、原因を絞っていくことで、現状の潤滑環境における問題点が明確になります。
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