焙煎機に潤滑は必要?最適な潤滑剤選びの5つのポイントをプロが解説
焙煎機は機械なため、潤滑が欠かせません。
しかし、「使用すべき潤滑剤の種類は何がいいのか」「どのような頻度で実施するべきか」悩んでいる方も多いでしょう。
200℃近い高温環境下で使用する焙煎機は、安全性だけでなく耐熱性に優れた潤滑材を選ぶ必要があります。
この記事では、焙煎機の基本構造をもとに潤滑の必要性や得られるメリットを解説します。
焙煎機に最適な潤滑剤選びのポイントも紹介するので、ぜひ参考にしてください。
焙煎機に潤滑は必要?基本構造を解説
焙煎機は、コーヒー豆などを焙煎する際に使用する機械です。
最も基本的な構造が焙煎釜を回転させるシリンダータイプであり、その中でも大きく以下の3つに分けられます。
- 直火式
- 熱風式
- 半熱風式
どのタイプでも高温で動作するため、各部品は摩擦や熱変形が生じやすくなります。
基本構造を理解することで、潤滑の必要性をより明確に理解できるでしょう。
焙煎機の基本構造
焙煎機は、以下の5つで構成されています。
- 焙煎釜(焙煎ドラム)
- 熱源
- 温度計
- ダンパー
- 冷却機
例えば、焙煎窯は熱源を利用して回転しながらコーヒー豆などを加熱します。
それぞれが適切に動作することで、焙煎工程を効率的に管理し、望ましい風味や特性を引き出すことが可能です。
しかし、これらの部品は摩擦や熱の影響を受けるため、適切に潤滑を実施し機械の動作をスムーズにする必要があります。
適切に潤滑することで、生産性の向上はもちろん焙煎機の性能を最大限に引き出せるでしょう。
潤滑が必要な箇所
焙煎機は、以下の箇所で潤滑が必要です。
- 焙煎釜軸受
- ギアボックス
- ベルト駆動部
- ドアやヒンジ
- 運転部の軸受やベアリング
例えば、焙煎機の釜は回転するため、軸受がスムーズに動く必要があります。
仮に、潤滑が不十分だと釜の回転が不安定になり、焙煎の品質や効率に影響を与えてしまうのです。
また、焙煎機の劣化や故障の原因にもつながります。
製品の品質を維持するためにも、定期的な潤滑を心がけましょう。
焙煎機の潤滑が必要な3つの理由
焙煎機の潤滑が必要な理由は、以下の3点です。
- 焙煎機を長持ちさせるため
- ランニングコストを削減するため
- 製品の品質を保つため
それぞれの理由を詳しく、確認しておきましょう。
理由①:焙煎機を長持ちさせるため
焙煎機は高温で高速かつ連続的に運転するため、部品同士の摩擦や熱による変形が避けられません。
したがって、部品同士の摩擦を減少させ、熱を適切に分散するために潤滑が必要なのです。
また、潤滑は焙煎機のメンテナンスや清掃作業を容易にし、機械の寿命を延ばすのにも役立ちます。
適切な潤滑によって、焙煎機の各部品の寿命を延ばし、長期間にわたって正常に動作させられるでしょう。
理由②:ランニングコストを削減するため
潤滑が不足すると、部品同士の摩擦が増加し、機械全体の動作に余分なエネルギーが必要になります。
一般的に焙煎機は、電力を動力源としており、電力消費が激しくなると、その分毎月の電気代も高くなるでしょう。
潤滑によって摩擦が低減されるため、焙煎機の動作がスムーズになり、エネルギー効率が向上します。
また、余分なエネルギーは運転コストを増やし、修理やメンテナンスの必要性が増加します。
定期的な潤滑によって、摩擦や熱による劣化を適切に管理することで、機械の寿命を延ばし、修理や交換のコストの削減が可能です。
これにより、焙煎工程全体の効率が向上し、ランニングコストの削減効果に期待できるでしょう。
理由③:製品の品質を保つため
焙煎機に潤滑剤を使用することで、以下のような品質を保てます。
- 製品
- 焙煎の均一性
- 温度管理
具体的には、潤滑不足により摩擦が増加することで部品同士が早期に摩耗し、焙煎機の動作が不安定になります。
これにより、焙煎される製品の品質や焙煎の均一性が損なわれる可能性があるのです。
また、異音や振動が製品の品質に問題を引き起こすケースも少なくありません。
適切な潤滑剤の使用により、焙煎機の性能を最適化し、一貫した品質で焙煎できます。
焙煎機に使用する潤滑剤を選ぶ際のポイント5選
潤滑剤を使用して焙煎機をメンテナンスする際は、一般的な製品ではなく、「食品機械用潤潤滑油」を使用しなくてはいけません。
しかし、食品に携わる潤滑油には、いくつかの種類が存在します。
焙煎機に使用する潤滑油は、以下の5つのポイントを考慮して選択しましょう。
- 粘度
- 耐熱性
- 酸化安定性
- 自浄作用
- 安全性
選び方の各ポイントを詳しく解説するので、自社業務に最適な焙煎機の潤滑油をお探しの方は、ぜひ参考にしてください。
ポイント①:粘度
焙煎機に使用する潤滑剤を選定する際は「粘度」を確認しましょう。
潤滑剤の流動性や潤滑効果に影響を与えるのが粘度です。
粘度が高すぎると摩擦抵抗が増加し、エネルギー損失が増加します。
逆に、粘度が低すぎると潤滑油膜が形成されず、焼き付きなどの問題が発生してしまうのです。
そのため、焙煎機に使用する場合は、高温下でも粘度が変化しにくい性質を持つ潤滑剤を選びましょう。
なお、焙煎機で使用される潤滑剤は、食品製造環境での使用に適している必要があります。
JAX JAPANでは、温度変化でも粘度が変化しにくい各種潤滑剤を提供しております。
食品への混入リスクを最小限に抑えながら、高温かつ湿度の高い環境下でも効果的に潤滑する「H1グリース」をぜひご検討ください。
【関連記事】潤滑油の粘度とは?動粘度と粘度指数についても解説
ポイント②:耐熱性
焙煎機で使用する潤滑剤には、耐熱性が求められます。
焙煎工程での焙煎機の温度は80°Cから200°Cと非常に高温です。
このような高温下で潤滑剤を使用する場合、耐熱性がないとすぐに劣化し、騒音やスラッジの発生などの潤滑トラブルを引き起こしかねません。
例えば、耐熱グリスは温度や高摩擦な環境下で使用するため、滴点が300度を超えるなどの特徴があります。
滴点とは、グリスが半固形状から液状に変わる温度となり、耐熱性を示す指標です。
なお、一般的なグリスは130℃付近が半固形状を保てる限界温度であり、熱によって軟化が生じると、潤滑不足を引き起こします。
潤滑剤の仕様を確認し、作業温度よりも高い耐熱性を持つ潤滑剤を選びましょう。
なお、JAX JAPANでは、耐熱性に優れた潤滑剤を各種取り揃えております。
グリースやチェーン油など用途に合わせた豊富なラインナップを取り揃えていますので、ぜひご確認ください。
【関連記事】耐熱グリスとは?成分別におもな種類と特徴、使用可能温度を解説
ポイント③:酸化安定性
潤滑剤における酸化安定性とは、潤滑剤の酸化による劣化を防ぐ性能や特性を指します。
焙煎機のような高温で作動する機械では、潤滑剤が酸化しやすくなるため、適切な酸化安定性を持つ潤滑剤を選ぶことが重要です。
潤滑剤が酸化すると、以下の劣化現象が起こります。
- 粘度増加による機械効率の低下
- 酸価上昇による摩耗増加
- スラッジ発生による動作安定性の低下
酸化安定性の高い潤滑剤は、高温環境下でも劣化しにくく、長期間にわたって安定した潤滑性能を提供します。
効果的に潤滑性を維持し、機械の寿命を延ばしてくれるでしょう。
ポイント④:自浄作用
焙煎機で使用する潤滑剤を選定する際は、自浄作用も重視する必要があります。
潤滑剤における自浄作用とは、潤滑剤が部品表面に付着した汚れや残留物を効果的に除去し、部品の清潔さを維持する能力です。
焙煎機は高温下で動作するため、潤滑剤が部品表面に残留すると、焙煎時に発生するカスや残留物が潤滑剤と混合し、機械内部に付着します。
自浄作用のある潤滑剤を選ぶことで、潤滑剤が部品表面に付着した汚れを効果的に洗い流し、作業効率や安定性を向上できるでしょう。
ポイント⑤:安全性
焙煎機は食品加工機械であるため、人体に影響を及ぼすことがないよう、安全性の高い潤滑剤を選ぶ必要があります。
なぜなら、潤滑剤が食品と接触する可能性があるからです。
潤滑剤が食品に接触しても消費者の健康に影響を及ぼすことがないよう、食品関連の規格に適合している潤滑剤を選ぶ必要があります。
なお、JAX JAPANが提供するNSF H1認証を持つ潤滑剤は、偶発的に食品に触れる可能性がある箇所でも使用可能です。
NSF H1認定を受けた製品を選ぶことで、食品の品質や安全性を確保できるでしょう。
安全性の高い原材料のみを使用したNSF H1規格の製品の詳細を、ぜひご確認ください。
【関連記事】世界標準の信頼性をもつNSFとは?NSF認証の取得プロセスやメリットを紹介
焙煎機の潤滑頻度はどのくらい?
焙煎機の潤滑頻度は、メーカーや機種によって異なりますが、一般的に年1〜2回が推奨されています。
ただし、焙煎量によって必要な潤滑頻度は異なるため、自社の使用状況に応じて調整しましょう。
毎回の使用後に以下の手入れを行うことをおすすめします。
- 使用状況に応じた潤滑
- クリーニング
- 定期的な点検
なお、煙突掃除は1か月に一度、オーバーホールは3か月に一度が目安です。
焙煎機はもちろん、製品への品質を維持するためにも適切な頻度で潤滑を実施しましょう。
焙煎機に使用できる安全性と耐熱性の高い潤滑剤をお探しなら
焙煎機に使用すべき潤滑剤は、高温に耐えられるだけでなく、食品製造環境での安全性が求められます。
「JAX JAPAN」では、安全性と耐熱性に優れた潤滑剤はもちろん、用途に合わせた幅広いラインナップをご用意しております。
自社の用途や環境に適した高品質の潤滑剤をお探しの方は、ぜひJAX製品の使用をご検討ください。
また、食品工場の設備で利用される一般的な潤滑油も、食品と接触した際には、異物混入のリスクが懸念されます。
食の安全と自社製品の信頼性を確保するために、焙煎機の潤滑剤を「NSF H1規格」への変更を検討してみてはいかがでしょうか。
気になる点がございましたら、お気軽にJAX JAPANまでご相談ください。
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