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その他潤滑油 2024.01.11(Thu)

ギヤ油とは?JIS規格1種と2種の違いや粘度別の種類をプロが解説

ギヤ油とは?JIS規格1種と2種の違いや粘度別の種類をプロが解説

ギヤ油は、機械の歯車やギヤを潤滑し、適切な動作を保つために使用される潤滑油です。

 

工業用ギヤ油は、一般機械や圧延機などに使用され、歯車同士の接触や摩擦を最小限に抑え、機器の寿命を維持する役割を担います。

 

しかし、歯車や軸受はさまざまな負荷にさらされるため、適切なギヤ油を選定する必要があります。

 

この記事では、ギヤ油とは何かJIS規格に基づく工業用ギヤ油の違いを解説します。

 

ギア油に求めるべき4つの性能についてもあわせて紹介するので、ぜひ参考にしてください。

 

ギヤ油とは

 

ギヤ油は、歯車や軸受などで使用される潤滑油の一種です。

 

ギヤの歯面と歯面の間に油膜を形成し、金属同士の直接接触を防ぎ、歯車のスムーズな回転と摩耗、摩擦を軽減するために使用されます。

 

ギヤ油は、おもに2つの種類に分けられます。

 

  1. 自動車用ギヤ油
  2. 工業用ギヤ油

 

機器の性能と寿命を維持するためにも、適切なギヤ油の選定と注油、オイル交換などの定期的なメンテナンスを心がけましょう。

ギア油に求められる4つの性能

 

ギア油に求められる性能は、以下の4つです。

 

  1. 耐荷重性能
  2. 熱酸化安定性
  3. さび止め・腐食防止性
  4. 泡立ち防止性

 

それぞれの性能について詳しく解説します。

 

性能①:耐荷重性能

 

耐荷重性は、ギヤ油が高負荷下で効果的に機能するために重要な性能です。

 

歯車や軸受けなどには、大きな負荷がかかるため、部品が適切に動作し、摩耗や損傷が発生しないように保護する必要があります。

 

耐荷重性の高いギヤ油は、適切な潤滑性を維持しながら、高負荷下での摩耗や損傷を最小限に抑えられるのが特徴です。

 

性能②:熱酸化安定性

 

熱酸化安定性は、高温条件下で酸素と接触した際に、酸化反応によってギヤ油の分解や変質を防ぎます。

 

ギヤ油は高温で運転される際、酸素との接触により潤滑油中の分子が酸化反応を起こします。

 

酸化反応によって生成される化合物は、潤滑油の性能を劣化させ、有害なスラッジや沈殿物を生成する原因になりかねません。

 

高温下で酸化反応が遅延されるほど、ギヤ油は長期間にわたってその性能を維持できます。

 

【関連記事】潤滑油のスラッジとは?発生の原因や対策を徹底解説

 

性能③:さび止め・腐食防止性

 

ギヤ油には金属部品に水分や酸素が付着するのを防ぎ、さびや腐食から保護するための性能も求められます。

 

歯車などの機器はさまざまな環境で使用されるため、湿気や水分が部品に侵入する可能性があります。

 

さびや腐食は歯車の表面を傷つけ、スムーズな動作を妨げる要因の一つです。

 

さび止め・腐食防止性が高いギヤ油は、金属表面に保護膜を形成し、さびや腐食の発生を防ぎます。

 

性能④:泡立ち防止性

 

高速回転する歯車や車輪で使用されるギア油には、泡立ち防止性も求められます。

 

潤滑箇所やギア油に泡が発生すると、以下のようなトラブルを引き起こす可能性があります。

 

  • 潤滑性能の低下
  • 冷却効果の低下
  • 部品の損傷

 

泡立ち防止性の高いギヤ油は、泡の形成を抑え、安定した潤滑性能を維持できるのが特徴です。

JIS規格に基づく工業用ギア油の種類一覧

 

工業用ギヤ油は用途によって、JIS規格で1種と2種に分類されています。

 

それぞれを詳しく見ていきましょう。

 

工業用ギア油における1種と2種の違い

 

1種と2種のおもな違いは、負荷に対する適合性です。

 

1種と2種の違いは、下表の通りです。

 

粘度指数 引火点 流動点 銅板腐食 さび止め

性能

抗乳化性 耐荷重能
54℃ 82℃
工業用1種 ISO VG32 90以上 170

以下

1以下 1以下 さびが

ないこと

60分

以下

ISO VG46 180以上
ISO VG68
ISO VG100 200以上 -5

以下

60分

以下

ISO VG150
ISO VG220
ISO VG320
ISO VG460
工業用2種 ISO VG68 90以上 180

以上

-15以下 1以下 さびが

ないこと

60分

以下

規定

しない

ISO VG100 200

以上

60分

以下

ISO VG150
ISO VG220 -10以下
ISO VG320
ISO VG460 -5以下
ISO VG680

1種は一般機械の比較的軽荷重の場合に使用します。

 

一方、2種は一般機械や圧延機などの中・重荷重に適しています。

 

引用元:JISK2219:2006 ギヤー油

ISO粘度グレード(JIS規格)による工業用ギア油の分類一覧

ISO粘度グレードは、工業用潤滑油の粘度を示す指標です。

 

国際標準化機構(ISO)により、40℃におけるギヤ油の動粘度範囲が規定されています。

 

ISO粘度グレード 種類 粘度範囲
32 ISO VG 32 28.8以上35.2以下
46 ISO VG 46 41.4以上50.6以下
68 ISO VG 68 61.2以上4.8以下
100 ISO VG 100 90.0以上110以下
150 ISO VG 150 135以上165以下
220 ISO VG 220 198以上242以下
320 ISO VG 320 288以上352以下
460 ISO VG 460 414以上506以下
680 ISO VG 680 612以上748以下

動粘度とは、オイルの流動性を示す値であり、VGの値が大きければ粘度が高いことを意味します。

 

高負荷がかかる機器には、粘度の高いギア油が適しているでしょう。

 

引用元:JISK2219:2006 ギヤー油

AGMA規格に基づく工業用ギア油の種類一覧

 

AGMA(米国歯車製造者協会)は、工業用ギヤ油についてタイプ分類しています。

 

タイプ 歯車の形式 摘要
密閉系歯車 R&O ・平歯車

・かさ歯車など

鉱油に酸化防止剤とさび止め剤を添加したもの
EP ・平歯車

・かさ歯車

・ウォームギヤなど

鉱油に極圧剤を添加したもの(ナフテン酸鉛系あるいは硫黄~りん系)
コンバウンド ウォームギヤなど 鉱油に3~10%の脂肪油あるいは合成脂肪油を添加したもの
合成油 特殊な条件下で使用 ジエステル、ポリグリコールおよび合成炭化水素系を添加したもの
開放系歯車 コンバウンド

(希釈)

・平歯車

・かさ歯車など

粘度の高いグレードのストレート鉱油またはEP油で揮発性の不燃性溶剤で希釈したもの

歯車の形状にはさまざまな種類があり、それぞれに適したギヤ油のタイプが存在します。

 

潤滑箇所に応じて、適切なタイプのギヤ油を選びましょう。

 

引用元:AGMA: 米国歯車製造者協会

ギア油を選定する際のチェックポイント3選

 

ギヤ油を選定する際のチェックポイントは、以下の3つです。

 

  1. 歯車の種類や装置の形式
  2. 荷重や周囲温度などの使用条件
  3. ギア油の粘度や含有成分・添加剤

 

ポイントを考慮して、最適なギヤ油を選定しましょう。

 

ポイント①:歯車の種類や装置の形式

 

まず、ギヤ油を選定するには、使用する歯車の種類や装置の形状を把握する必要があります。

 

歯車の種類は多岐にわたります。

 

  • 平行軸
  • 交差軸
  • 食い違い軸

 

例えば、平行軸は直線的な歯車で、高い回転速度で使用されます。

 

そのため、平行軸歯車に適切なギヤ油は、高い粘度指数と耐摩耗性を持つものを選ぶ必要があるでしょう。

 

歯車や形状を理解し、適したギヤ油を選定することで、機器の性能と寿命を最適化できます。

 

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特に、ウォームギヤの潤滑に適しており、統計的に3〜5%のエネルギー削減を期待できるのが特徴です。

 

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ポイント②:荷重や周囲温度などの使用条件

 

ギヤ油を使用する箇所の荷重や周囲温度などの使用条件によって、選定することが大切です。

 

例えば、高荷重の環境では、耐荷重性能が必要です。

 

また、高温環境ではギヤ油が酸化しやすくなり、粘度が低下します。

 

一方、低温環境ではギヤ油の粘度が上昇し、潤滑性が低下する可能性があるでしょう。

 

高温環境では酸化安定性と耐熱性、低温環境では流動性を保つことが求められます。

 

歯車の荷重や周囲温度など使用条件に応じて、適切なギヤ油を選定することで、摩耗や損傷のリスクを軽減できます。

 

ポイント③:ギア油の粘度や含有成分・添加剤

 

ギヤ油の粘度は、潤滑性に大きく影響します。

 

一般的に高負荷や高温環境では、高粘度のギヤ油が必要です。

 

適切な粘度を選ぶことで、歯車の潤滑性能が最適化されます。

 

また、ギヤ油にはさまざまな含有成分や添加剤が含まれており、下記の役割を果たします。

 

  • 潤滑性
  • 摩耗保護
  • 酸化安定性
  • 防さび性
  • 腐食防止性など

 

ギヤ油の粘度や含有成分・添加剤は、ギヤシステム内に必要とする要件に直接関連します。

 

要件に合致するギヤ油を選定することで、機器の寿命を維持できるでしょう。

 

【関連記事】潤滑油の粘度とは?動粘度と粘度指数についても解説
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歯車や軸受などの正常な動作と寿命を維持するには、適切なギヤ油の選定が欠かせません。

 

加えて、食品工場や飲食業界などで使用される場合は、潤滑性能だけでなく製品の安全性も考慮する必要があります。

 

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