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その他潤滑油 2023.09.07(Thu)

グリースとは?潤滑油との違い・使い分け、求められる5つの性能を徹底解説

グリースとは?潤滑油との違い・使い分け、求められる5つの性能を徹底解説

グリースは低速度で回転する機械部品の軸部分や軸受(ベアリング)など、スムーズな動作が求められる部位に使用される潤滑剤です。

 

なお、代表的な潤滑剤として潤滑油を思い浮かべる方も多いと思いますが、グリースとは一体どのような違いがあるのでしょうか。

 

本記事では、グリースと潤滑油の違いやグリースに求められる5つの性能について解説します。

 

グリースの分類方法や種類別の特徴、食品工場で使用可能なおすすめのグリースも紹介しているため、食品機械を扱う事業所の方はぜひ参考にしてください。

 

また、耐熱・耐水性能にすぐれたグリースをお探しの方であれば「JAX JAPAN」が提供する「製品」をご検討ください。

 

グリースとは


グリース(グリス)とは、鉱物油や合成油などが原料の基油(ベースオイル)に増ちょう剤や添加剤を加えた、半固体または固体状の潤滑剤です。

 

グリースは低速度で回転する軸部分など、液体の潤滑剤では吸着の維持が難しい摺動面(しゅうどうめん)など、幅広い場面で使用されます。

 

なお、含まれている成分の種類や割合などにより性能が大きく異なるため、使用環境や用途に適したグリースを選定しましょう。

グリースと潤滑油の違い・使い分け

グリースと潤滑油はどちらも潤滑剤に分類されますが、次の2点が異なります。

 

  • 増ちょう剤の含有の有無
  • 形状

 

グリースには、ちょう度(粘度)を高めるために「増ちょう剤」が含まれており、半固体または固体の形状をしています。一方、潤滑油の形状は液体です。

 

また、グリースは金属部位への親和性や吸着性が高いですが、潤滑油には浸透性が高いという特徴があります。

 

一般的にグリースと潤滑油の使用に適している機械部位は以下の通りです。

 

グリースが適しているおもな機械部位 潤滑油が適しているおもな機械部位
  • ベアリング
  • ブッシュ
  • ギア など
  • スプロケット
  • チェーン など

 

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グリースの成分

 

グリースのおもな成分と割合は、以下の通りです。

 

  • 基油:80~90%
  • 増ちょう剤:3~15%
  • 添加剤:0.5~10%

 

成分の種類や特徴について、それぞれ解説します。

 

使用環境や用途に適したグリースをお選びいただくためにも、成分別の特徴について把握しておきましょう。

成分①:基油

グリースの80〜90%を占めている成分が基油(ベースオイル)です。

 

なお、基油(ベースオイル)は、おもに以下の2種類に分けられます。

 

  • 石油や天然ガスなどの天然素材から製造される「鉱油」
  • 人工的に製造される「合成油」

 

鉱油と合成油のおもな違いは、不純物の含有量です。

 

不純物の含有量が少ない合成油には、温度の変化に伴うちょう度(粘度)の変化や劣化などが生じにくいという特徴があります。

 

鉱油での対応が難しい環境でも使用できる可能性がある反面、比較的高額なのが特徴です。

成分②:増ちょう剤

基油の次に含有量が多い成分は、増ちょう剤です。

 

全体の3〜15%を占めている増ちょう剤は、大きく以下の2種類に分けられます。

 

  • 金属石けん型
  • 非石けん型

 

金属石けん型と非石けん型の違いは、製造方法と添加されている増ちょう剤の種類です。

 

金属石けん型では、ナトリウムとカリウム以外の金属塩と長鎖脂肪酸で構成された金属石けんを増ちょう剤として使用します。

 

一方、非石けん型で増ちょう剤として使用されている成分は、有機化合物もしくは無機化合物です。

 

また、金属石けん型と非石けん型は、使用可能温度が以下のように異なります。

 

  • 金属石けん型:70~150℃程度
  • 非石けん型:200℃以上も対応可能

 

増ちょう剤の種類によってグリスの耐熱性は大きく変化するため、あわせて確認しておきましょう。

 

なお、グリスの耐熱性については、以下の記事で詳しく解説しているので、合わせてご確認ください。

 

【関連記事】耐熱グリスとは?成分別におもな種類と特徴、使用可能温度を解説

成分③:添加剤

グリス全体の0.5〜10%を占めている成分が添加剤です。

 

添加剤の配合によって、成分を安定させたり、さまざまな性能を与えたりする効果に期待できます。

 

なお、グリースに付与されている添加剤のおもな種類は、次の通りです。

 

  • 酸化防止剤
  • 腐食防止剤
  • 荷重添加剤(極圧剤や摩耗防止剤など)
  • 防錆剤 など

 

グリースに付与されている添加剤の成分の種類や全体に占める添加剤の割合は商品により異なります。

 

基油や増ちょう剤の成分の種類を確認する際は、忘れずにご確認ください。

 

潤滑剤に含まれる添加剤の詳細を知りたい方は、以下の記事も合わせてご確認ください。

 

【関連記事】潤滑油添加剤とは?9つの種類別に特徴や成分、用途・役割を徹底解説

グリースに求められる5つの性能

 

グリースに含まれている成分は商品により異なりますが、求められる性能は共通しています。

 

なお、グリースに求められる性能は、おもに次の5つです。

 

  1. 適性ちょう度
  2. 酸化安定性
  3. 機械的安定性
  4. 防錆・腐食防止性
  5. 使用環境・用途に応じた性能

 

性能ごとの詳細や上記の性能が求められる理由などについて、それぞれ解説します。

性能①:適性ちょう度

グリースには適性ちょう度が求められます。

 

なぜなら、形状や粘度が適切でないグリースを使用すると、漏れや油膜切れが起こりやすくなるからです。

 

また、使用箇所以外の部分にグリースが漏れると、機械が熱を持ったり抵抗が大きくなったりする可能性があります。

 

機械をスムーズに動作させるためにも、適切なちょう度のグリースを使用することが重要です。

 

なお、ちょう度は「NLGI(米国潤滑グリース協会)」や「JIS」により以下のように定められています。

 

ちょう度の番号(外観) 混和ちょう度
000(半流動体) 445~475
00(半流動体) 400~430
0(軟質) 355~385
1(やや軟質) 310~340
2(普通) 265~295
3(やや硬質) 220~250
4(硬質) 175~205
5(硬質) 130~160
6(固体) 85~115

性能②:酸化安定性

グリースには、酸化安定性も求められます。

 

なぜなら、高温になると空気中の酸素と反応し、酸化による劣化が起こる場合があるからです。

 

酸化による劣化が起こると、グリースに以下のような変化が生じます。

 

  • 変色
  • ちょう度の変化
  • 滴点の変化

 

上記のような酸化による劣化を防ぐため、グリースには酸化防止剤が添加されています。

 

また、使用されている基油や増ちょう剤の種類によっても、グリースの酸化安定性は異なるため、適切な商品の選定が必要です。

性能③:機械的安定性

機械の動作に対して形状を柔軟に変化させる「機械的安定性」も、グリースに求められる性能の一つです。

 

なぜなら、グリースに含まれる増ちょう剤には、以下の性質があるからです。

 

  • 静止時:立体的な網目を構造し半固体もしくは固体状にな
  • 機械の動作時:立体的な網目がせん断されて柔らかい形状になる

 

機械の動作による強いせん断や高温などが原因でグリースが柔軟に変化できない場合には、次の現象が生じる可能性があります。

 

  • グリースの漏れ
  • 機械が円滑に動作できない
  • 騒音など

 

グリースの食品への混入を予防するためにも、使用する環境や用途に適したグリースを選ぶ必要があります。

 

なお、機械安定性は増ちょう剤の種類が関係するため、グリースを選ぶ際は漏れにくさや安全性を確認しておきましょう。

性能④:防錆・腐食防止性

グリースには、防錆性や腐食防止性も求められています。

 

なぜなら、水を使用する箇所の錆や腐食が問題になる可能性があるからです。

 

特に、湿潤環境になりやすい食品工場などでは、防錆性や腐食防止性を備えたグリースが求められます。

性能⑤:使用環境・用途に応じた性能

グリースには、使用環境や用途に応じた以下の性能も求められます。

 

なぜなら、特殊な環境で使用する場合はグリースの変化やトラブルが生じやすくなるからです。

 

  • 低温特性
  • 耐熱性
  • 耐水性
  • 極圧性
  • 耐摩耗性など

 

機械の使用環境や用途などは業界により異なるため、自社が求めている性能を把握してから適切なグリースを検討しましょう。

【4つの分類別】グリースの種類一覧表

グリースの種類は、4つの方法で分類されます。

 

  1. JIS規格に基づく分類
  2. JIS規格以外の分類
  3. 増ちょう剤別分類
  4. 基油別分類

 

分類方法の詳細や分類別のグリースの種類などを解説するため、自社に適したグリースを検討する際の参考にしてください。

分類①:JIS規格に基づく分類

JIS規格(日本産業規格)では、用途別でグリースを7種類に分類しています。成分や性能などの特徴も以下のように定められています。

 

用途 種別 使用例 ちょう度 使用可能温度 低荷重 高荷重 衝撃 耐水
一般用グリース 1種 一般低荷重用 1号~4号 -10℃~60℃
2種 一般中荷重用 2号~3号 -10℃~100℃
転がり軸受用グリース 1種 凡用 1号~3号 -20℃~100℃
2種 低温用 0号~2号 -40℃~80℃
3種 広範囲用 1号~3号 -30℃~130℃
自動車用シャシーグリース 1種 自動車シャシー用 00号~2号 -10℃~60℃
ホイールベアリンググリース 1種 自動車ホイールベアリング用 2号~3号 -20℃~120℃
集中給油用グリース 1種 集中給油式中荷重用 00号~1号 -10℃~60℃
2種 0号~2号 -10℃~100℃
3種 集中給油式高荷重用 -10℃~60℃
4種 -10℃~100℃
高荷重用グリース 1種 衝撃高荷重用 0号~3号 -10℃~100℃
ギヤコンパウンド 1種 オープンギヤ及びワイヤーロープ用 1号~3号 -10℃~100℃

引用元:JISK2220:2013 グリース

分類②:JIS規格以外の分類

JIS規格以外にも、食品機械用のグリースや実験室用のグリースなど、用途別で以下のように分類可能です。

 

用途 使用されるおもな部位や場所 特徴
食品機械用グリース 食品を製造する機械
  • NSFが定めた食品機械用潤滑剤の規格「食品工場用潤滑油 NSFガイドライン」を満たしている
  • 規格により7つの区分に分けられる
ラバーグリース 自動車のブレーキ部分
  • ゴムの潤滑性を高める効果が期待できる
耐樹脂性グリース 樹脂
  • 樹脂と接触する可能性がある箇所へ潤滑を目的に使用される
  • 潤滑による樹脂への影響が少なくなるように設計されている
実験室用グリース 実験室
  • 実験室で使用されることが多い
水溶性グリース類 油を主成分としない毒性のない物質が求められる場合
  • 潤滑剤としての性能や粘度の高さを有している
接点用グリース 電気部品や電子部品
  • おもに接続部分や摺動接点部などに使用される
シャシーグリース 自動車のシャシーの軸受や摺動部など
  • 耐熱性の高さは求められないが、高い耐水性を要する

 

特に食品工場で使用するグリースを選ぶ際は、食品への混入リスクを考慮し、人体へ影響が出にくい原料で構成された食品機械用のグリースを使用する必要があります。

 

食品機械用潤滑剤の規格や区分の詳細を知りたい方は、下記の記事も合わせてご確認ください。

 

【関連記事】食品機械用グリスとは?一般的な製品との違いやH1規格について解説

 

なお、潤滑性能と安全性を両立した食品機械用グリスをお探しの方には、NSF H1認証を取得した「H1グリース」の使用をおすすめします 。

 

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分類③:増ちょう剤別分類

グリースに含まれている増ちょう剤の種類により、金属石けん型と非石けん型に分けられます。

 

分類別の増ちょう剤の種類についても、合わせてご確認ください。

 

増ちょう剤別の分類 おもな成分 増ちょう剤のおもな種類
金属石けん型 金属石けん
  • カルシウム石けん
  • カルシウム複合石けん
  • ナトリウム石けん
  • アルミニウム石けん
  • アルミニウム複合石けん
  • リチウム石けん
  • リチウム複合石けん など
非石けん型 有機化合物もしくは無機化合物
  • 有機化ベントナイト
  • ウレア(ウレア結合が2個以上)
  • ナトリウムテレフタレート
  • ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)
  • シリカゲル など

分類④:基油別分類

グリースに含まれている基油の種類は以下のように分類されます。

 

金額や不純物の含有量、おもな種類などを知りたい方は以下をご確認ください。

 

基油別の分類 価格 不純物の含有量 基油のおもな種類
鉱油 比較的安価 多め
  • パラフィン系
  • ナフテン系
合成油 比較的高価 少なめ
  • PAO系
  • エステル系
  • フッ素系
  • シリコーンオイル
  • フェニルエーテル系

食品工場で使用可能な安全性の高いグリースとは

 

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H1グリースは、公衆衛生・環境に関する事業を行う第三者機関「NSF」が定める「H1規格」を満たす食品機械用潤滑油です。

 

アメリカ「FDA」の認証を受けた安全性の高い原材料から製造されているため、万が一製品に混入し消費者の口に入ったとしても、健康被害を最小限に抑えられます。

 

また、機械の動作を補助する潤滑剤や使用環境や用途に応じた性能など、幅広い業界の工場に対応可能なハイスペックグリースです。

 

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