H1グリスとは?NSFの規格と使用する3つのメリット、注意点を解説
グリスは自社工場の製造機械を磨耗から保護し、動作をスムーズにするために重要な役割を担っています。
なお、性能や形状によって、さまざまな種類に分かれるグリスのなかでも、食品機械に使用できる安全性の高い製品が「H1グリス」です。
本記事では、H1グリスの特徴と使用するメリットについて解説します。H1グリスの安全性を担保するNFSの規格や、使用時の注意点もご紹介するので、食品機械を扱う事業者の方は、ぜひ参考にしてください。
H1グリスとは
H1グリスとは、公衆衛生・環境に関する事業を行う第三者機関「NSF」が定める「H1規格」を満たした食品機械用グリスです。
一般的に製造機械では、部品の摩耗を防ぎ、動作を補助するために、グリスやチェーンオイルなどの潤滑剤が必要です。
しかし、食品工場の場合、潤滑剤が製品に混入してしまうリスクがあるため、事業者は混入させない、または万が一混入しても消費者に健康被害が発生しないような対策を取らなければなりません。
現実的な対策として、多くの食品工場が検討・実施しているのが、FDA(米国食品医薬品局)が認めた安全性の高い原料を使用した「H1規格」の潤滑剤を使用することです。
なお、H1規格を満たす潤滑剤とは「食品に接触するべきではないが混入しても安全な潤滑剤(Lubricants with incidental contact)」と国際的な基準で定義されています。
したがって、H1グリスは食品製造に関わる事業者にとって、大きな課題となる潤滑剤混入への有力な対策といえるでしょう。
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H1グリスの認証を行う「NSF」とは
「NSF(National Sanitation Foundation International)」とは、公衆衛生や環境保護に関する規格の作成や製品評価・認証を実施している第三者機関です。
NSFでは、公衆衛生や食品の安全に関する取り組みの1つとして、食品機械用グリスや潤滑油の安全規格「食品工場用潤滑油 NSFガイドライン」を定めています。そのなかの規格の1つが「H1規格」です。
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H1以外の食品機械用グリスの規格
NSFでは、H1以外に食品機械用グリス・潤滑油に対して、以下のような規格を定めています。
- H2
- H3
- 3H
- HT1
- HT2
それぞれの規格の詳細を解説しますので、食品機械用グリス・潤滑油への理解を深めるために参考にしてください。
規格①:H2
H2(Lubricants with no contact)規格に該当する潤滑剤は、食品に絶対に使用してはならないと定義されています。
ただし、食品工場全域で使用できないわけではなく、周囲に食品が置かれていない場所、接触しない場所であれば使用可能です。
とはいえ、同施設内で使用するのであれば、少なからず混入リスクはあるため、鉛化合物など人体への有害性が高い物質は、含まないことが条件に含まれています。
規格②:H3
H3(Soluble oils)規格に該当する潤滑剤は、食肉を吊すフックやレールの防錆に使用されるものとして定義されています。
H3規格を満たすには、FDAの認可を受けた大豆油やコーン油などの食用油または、GRAS(安全基準合格証)を与えた物質を、原材料として使用しなければなりません。
なお、H3規格の潤滑剤には、安全性の高い原材料が使用されますが、食品接触時には洗うか、拭き取らなくてはならないというルールが定められています。
規格③:3H
3H規格に該当する潤滑剤は、直接食品に接触する目的で使用されるものとして定義されています。
たとえば、食品と直接接触する離型剤やグリル、フライパンの焦げつきを防ぐ植物油などが代表的です。
規格④:HT1
HT1(Heat transfer fluids with incidental contact)規格に該当するのは、偶発的に食品に触れる可能性がある箇所で使用可能な熱媒体油です。
消費者の口に入る可能性があるため、FDAの認可を受けた特定の原材料を使用する必要があります。
規格⑤:HT2
HT2(Heat transfer fluids with no contact)規格に該当するのは、食品に触れる可能性がない箇所で使用可能な熱媒体油です。
万が一、食品へ混入した場合に備えて、鉛化合物など人体への有害性が高い物質は含まないことが条件になります。
H1グリスを使用する3つのメリット
食品工場においてH1グリスを使用することで、以下のような3つのメリットに期待できます。
- 製造工程のリスクを最小限に抑えられる
- FSSC22000認証の取得につながる
- ビジネスチャンスが拡大する
それぞれのメリットを詳しく解説するので、ぜひ参考にしてください。
メリット①:製造工程のリスクを最小限に抑えられる
食品工場でH1グリスを使用するメリットとして、製造工程における潤滑剤の混入リスクを最小限に抑えられることが挙げられます。
世界中で「食の安全」への意識が高まっている現在、日本では令和3年6月から原則、すべての食品事業者に「HACCP」に沿った衛生管理を義務付ける方針を決定しました。
参照元:厚生労働省|HACCP(ハサップ)に沿った衛生管理の制度
HACCPとは、食品衛生管理の国際的な手法であり、食品製造機械に関して、以下のような危険回避の順序を示しています。
- 潤滑剤を使用しない
- 潤滑剤が漏れない・触れない対策
- 偶発的接触が許容される潤滑剤の使用
なお、食品機械をスムーズに動作させ、部品の消耗を最小限に抑えるには、潤滑剤を使用する必要があるため、HACCPの順序1.は現実的な方法ではありません。
現在では、オイルレスの部品・機械の開発が進んでいますが、電力使用量が増加してしまったり、部品の寿命が低下してしまったりと運用上のデメリットが少なからず生じるのも事実です。
とはいえ、機械を扱う食品工場において、どれだけ細心の注意を払っていたとしても、潤滑剤が絶対に漏れない・触れない対策を実施するのは、非常に困難です。
したがって、多くの食品工場は、HACCPに対応するための具体的な対策として、偶発的接触が許容される潤滑剤の使用=H1規格の潤滑剤の使用に取り組んでいます。
H1規格のグリスを食品製造機械に使用することで、自社製品の安全性を担保できるとともに、最小限のコストでHACCPに対応できる点は、食品事業者にとって大きなメリットといえるでしょう。
【関連記事】食品の衛生・安全を守るHACCPとはどんな制度?義務化の時期や手順を解説
メリット②:FSSC22000認証の取得につながる
H1グリスを食品機械に使用することで、FSSC22000(Food Safety System Certification)の認証を取得できる可能性があります。
FSSC22000とは、食品を安全に消費者に届けるために、国際食品安全イニシアティブ(GFSI)が定めた国際的な規格です。
また、FSSC22000は、国際標準化機構(ISO)が定めた食品安全の国際規格「ISO22000」を土台に、HACCPの衛生管理手法やISO9001の品質管理手法を取り入れた、食の安全性を守るための規格でもあります。
FSSC22000の認証を取得できれば、安全性・信頼性の高い食品事業者として国際的に認められたといっても過言ではありません。その結果、自社のイメージアップや規模拡大などさまざまなメリットに期待できるでしょう。
【関連記事】FSSC22000とは?3つの要求事項と取得できる企業を簡単に解説
メリット③:ビジネスチャンスが拡大する
食品工場においてH1グリスを活用することで、ビジネスチャンスが拡大する可能性もあります。
H1グリスによって、自社製品の安全性を担保することで、消費者や取引先企業からの信頼を獲得できたり、新規顧客開拓の際、有利に働いたりと、事業者にとって無視できないメリットにつながります。
また、NSFのH1規格は国際的な基準であるため、海外への販路拡大にも効果的です。
潤滑剤の混入リスクを最小限にできるだけでなく、ビジネス的な観点からも、食品事業者がH1グリスを使用するメリットは非常に大きいといえるでしょう。
H1グリスを使用する際の注意点
H1グリスを使用する際には、成分の混合に注意しなければなりません。
特に、これまで人体に有害な鉱物油・合成油を使用していた場合、少しでも成分が付着していると、製品の安全性を担保できません。
また、これまで使用していた潤滑剤の成分とH1グリスの成分が反応し、性質が変化してしまう可能性もあります。
H1グリスの潤滑性能を最大限発揮し、自社製品の安全性を保つためにも、潤滑剤を切り替える際は、入念な洗浄・ブラッシングを心がけましょう。
自社製品の安全性を担保できるH1グリスをお探しなら
自社の食品工場で使用可能な安全性の高いグリスをお探しであれば「JAX JAPAN」が提供するH1グリースをご検討ください。
H1グリースは、NSF H1規格を取得している食品機械用グリスとして国際的に安全性を認められた潤滑剤です。
また、滴点254〜316℃の高耐熱性と高耐水性を誇るため、過酷な潤滑条件においても高いパフォーマンスを発揮します。
無料サンプルもご用意していますので、安全性と潤滑油としての性能・汎用性を備えた「H1グリース」をぜひお試しください。
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