油圧作動油とは?おもな種類や粘度の違いを解説
さまざまな工業用機械や建築機械で使用されている油圧装置。そのなかでも、動力を伝えるための媒介として使用されているのが「油圧作動油」です。
しかし、自社でも油圧装置を動力源としている機械を使用しているものの、油圧作動油の役割を正しく理解していない方も多いのではないでしょうか。
本記事では、油圧機器の動作に必要不可欠な油圧作動油について詳しく解説します。
油圧作動油の概要や役割、おもな種類や使用時の注意点まで網羅的にご紹介するので、ぜひ参考にしてください。
また、耐熱・耐水性能にすぐれた油圧作動油をお探しの方であれば「JAX JAPAN」が提供する「製品」をご検討ください。
油圧作動油とは
油圧作動油とは、油圧装置に使用する工業用潤滑油です。
油圧装置とは文字通り、油圧によって作動する装置を意味し、以下のような幅広い機械の駆動源として採用されています。
- 油圧ショベルなどの建設機械
- フォークリフトなどの産業車両
- トラクターなどの農業機械
- 射出成形機や工作機器などの一般産業機械
油圧装置はエンジンや発電機によって、油圧ポンプを作動させることで作動油に圧力を発生させ、モーターやシリンダが動く仕組みになっています。
油圧作動油は機械へ動力を伝えるための媒体として、重要な役割を担っているのです。
油圧作動油の4つの役割
油圧作動油のおもな役割は、以下の4点です。
- 動力の伝達
- 潤滑作用
- 防錆作用
- 冷却作用
それぞれの役割について詳細を把握しておきましょう。
役割①:動力の伝達
油圧作動油の最も重要な役割が「動力の伝達」です。
機械を動かすには動力が必要ですが、直接的に力を伝えてしまうと機械に大きな負担がかかってしまいます。
そのため、機械に伝える力の大きさをコントロールするための装置が必要です。
油圧装置は作動油を介して動力を伝えることで、機械が故障しない範囲で必要な分だけ力を伝えます。
常温下において油は液体ですが、密閉容器内で圧力をかけることで動力をスムーズに伝えられるようになります。
つまり、油にかける圧力の強さを調整することで、機械に伝える動力の大きさをコントロールしているのです。
役割②:潤滑作用
油圧作動油は、金属の摩耗を防ぐ潤滑作用も備えています。
油圧装置では金属の部品が動作し、圧力をコントロールするため、摩擦による消耗が発生しやすいです。
そのため、油圧作動油は金属の表面に油膜を形成し、部品同士の摩擦を軽減するための潤滑機能を備えています。
作動油の潤滑性能が高ければ、ポンプや軸受、歯車など金属パーツの劣化や損傷を軽減できるため、油圧装置の長寿命化やメンテナンスコストの削減につながります。
役割③:防錆作用
油圧作動油は、金属の錆や腐食を防ぐ役割も備えています。
金属箇所に油膜を形成することで、錆・腐食の原因となる酸素や水分の接触を防ぎます。
ただし、油圧作動油には硫黄や亜鉛といった金属の腐食を進める成分が混入しているケースもあります。
使用条件を確認したうえで、用途に適した製品の選定しましょう。
役割④:冷却作用
油圧装置内に溜まった熱を冷まし、高温による故障や部品の変形を防ぐのも油圧作動油の重要な役割です。
ポンプやシリンダーなどの部品が高圧、高速下で動作する油圧装置内部は、高温になりやすいです。
油圧作動油が各種部品に接触し、熱を奪うことで高温下でもトラブルが発生しにくい動作環境を実現できます。
ただし、高温下では作動油の温度も上がりやすいため、難燃性(燃えにくさ)や流動性など、高温でも性能を発揮できる作動油が必要です。
油圧作動油のおもな種類
油圧作動油はおもに、以下の2種類に分かれます。
- 石油系作動油
- 難燃性作動油
それぞれの特徴や細かい分類をご紹介します。
種類①:石油系作動油
石油系作動油は、おもに石油を原料とした油圧作動油です。
なお、石油系作動油は以下のように細分化されます。
石油系作動油の種類 | 特徴・機能 |
純鉱油 | 添加剤を含まない鉱油 |
一般作動油(R&Oタイプ) | 鉱油に防錆剤と酸化防止剤を添加した最もポピュラーな石油系作動油 |
耐摩耗性作動油 | 鉱油に耐摩耗剤や極圧剤を添加した潤滑性能の高い石油系作動油 |
高粘度指数作動油 | 温度による粘度変化が少ない石油系作動油 |
油圧摺動面兼用油 | 油圧作動油と摺動面の潤滑油としての性能を兼ね備えたもの |
なかでも、最も一般的に使用されているのが「一般作動油」です。
一般作動油は、おもにパラフィン系のベースオイルを使用しており「R&Oタイプ」とも呼ばれています。
R&Oとは、Rust Inhibitor(防錆剤)とOxidation Inhibitor(酸化防止剤)の略で、含有している添加剤を示しています。
石油系作動油のなかでも、長寿命で汎用性も高いですが、耐摩耗性に欠けるのが特徴です。
なお、潤滑剤のベースオイル(基油)について詳しく知りたい方は、以下の記事も合わせてご確認ください。
【関連記事】ベースオイルとは?潤滑剤に使用されるおもな種類・成分と役割を解説
種類②:難燃性作動油
難燃性作動油は文字通り、燃えにくい油圧作動油であり、火災の危険性が懸念される用途や消防法が適用される設備に使用されます。
なお、難燃性作動油は以下のように細分化されます。
難燃性作動油の種類 | 特徴・機能 | |
合成系作動油 | リン酸エステル系 | ・燃えにくい
・取り扱いが比較的容易 ・潤滑性能に優れる |
脂肪酸エステル系 | ||
含水系作動油 | O/Wエマルション | ・比較的安価
・水を含んでいるため難燃性が非常に高い ・水分の管理が必要 ・合成系作動油と比較して潤滑性能は劣る |
W/Oエマルション | ||
水-グリコール系 | ||
生成分解作動油 | ・微生物が分解できる植物油や合成系基油を使用
・環境への配慮が必要な場合に使用される |
|
高含水作動油 | ・90〜95%の水と鉱油、添加物を配合
・熱伝導率が高い |
油圧作動油に含まれる添加剤の種類一覧表
油圧作動油には、おもに以下のような添加剤が含まれています。
添加剤の名称 | 特徴・機能 |
耐摩耗剤 | 摩擦面に油膜を形成し、摩耗を防ぐ |
酸化防止剤 | 油圧作動油の酸化や劣化、スラッジの発生を防ぐ |
防錆剤・腐食防止剤 | 金属面に油膜を形成し、錆・腐食の発生を防ぐ |
消泡剤 | 油圧作動油の泡立ちを防ぐ |
極圧剤 | 高圧、重荷重下における部品の焼き付きや損傷を防ぐ |
粘度指数向上剤 | 温度による油圧作動油の粘度変化を防ぐ |
流動点降下剤 | 低温下における油圧作動油の流動性を高める |
清浄分散剤 | 沈積物やスラッジを清浄化し、オイル中に分散する |
抗乳化剤 | 油圧作動油の乳化による潤滑性能低下を防ぐ |
なお、各種添加剤の機能や成分について詳しく知りたい方は、下記の記事も合わせてご確認ください。
【関連記事】潤滑油添加剤とは?9つの種類別に特徴や成分、用途・役割を徹底解説
油圧作動油の粘度の違い
油圧作動油の粘度の違いは「VG32」や「VG46」といった数字で表されます。
この数値は「ISO粘度分類」と呼ばれ、40℃における潤滑油類の動粘度を規定しています。
ISO粘度分類は上記のような20のグレードに分かれており、数値が大きいほど粘度も高くなります。
一方、粘度が低い=VGの値が小さいほど圧力伝動率は高くなりますが、オイル漏れは発生しやすくなります。
そのため、用途や使用箇所に応じて、適切な粘度の油圧作動油を選定することが重要です。
なお、さまざまな温度や使用箇所で効果を発揮する汎用性の高い油圧作動油をお探しなら、JAX製品の使用をおすすめします。
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油圧作動油使用時の注意点
油圧作動油を使用する際、用途・メーカーの異なるオイルを混合するのはおすすめしません。
たとえ、ISO粘度分類が同じ「VG32」であっても、用途が異なれば含有する添加剤の種類も異なります。
異なるオイルを混合してしまうと、添加剤の成分が反応しあい、トラブルが発生する可能性もあります。
また、用途が同じでもメーカーによって、含有する添加剤の種類は異なるケースもあるため注意が必要です。
特に、鉱油と合成油は相性がよくないケースも多いため、油圧作動油の継ぎ足し使用は極力、避けましょう。
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NSF H1油圧作動油は、公衆衛生・環境に関する事業を行う第三者機関「NSF」が定める「H1規格」の食品機械用油圧作動油です。
米国「FDA」の認証を受けた安全性の高い原材料から製造されており、万が一消費者の口に入ったとしても、健康被害を最小限に抑えられます。
また、耐摩耗剤、防錆剤、高分子粘度剤を効果的に配合しているため、油圧装置を長期間摩耗から守る役割を果たします。
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【関連記事】世界標準の信頼性をもつNSFとは?NSF認証の取得プロセスやメリットを紹介