潤滑油添加剤とは?9つの種類別に特徴や成分、用途・役割を徹底解説
潤滑油の基本性能を向上するために、配合される「潤滑油添加剤」。
自社機械に使用する潤滑油を選定する際にも、注目すべき成分の一つです。
しかし、潤滑油添加剤には数多くの種類が存在しているため、それぞれどのような効果があるのか分からない方も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、潤滑油添加剤の種類別にそれぞれの特徴や役割、成分を解説します。
自社の環境・用途に最適な添加剤を含む潤滑油を選定するための参考としてご活用ください。
潤滑油添加剤とは
添加剤とは、潤滑油に配合されている構成成分の一つです。
一般的に潤滑油は、以下のような組成で調合されています。
- ベースオイル(基油):80〜90%
- 添加剤:10〜20%
潤滑油の性能基盤を大きく左右するベースオイルに対し、用途や使用環境に応じて、さまざまな効果を追加するのが添加剤の役割です。
なお、ベースオイルについて詳しく知りたい方は下記の記事も合わせてご確認ください。
関連記事:ベースオイルとは?潤滑剤に使用されるおもな種類・成分と役割を解説
潤滑油添加剤の種類9選
潤滑油添加剤には、以下のような種類が存在します。
- 耐荷重添加剤
- 清浄分散剤
- 酸化防止剤
- 粘度指数向上剤
- 流動点降下剤
- 腐食防止剤
- 錆び止め剤
- 抗乳化剤
- 消泡剤
それぞれの潤滑油添加剤の概要や特徴についてご紹介します。
種類①:耐荷重添加剤
耐荷重添加剤は、潤滑油の耐荷重性能と潤滑性能を向上させるための添加剤です。
なお、耐荷重添加剤はおもに、以下の3種類に分類されます。
耐荷重添加剤の種類 | おもな機能 |
油性剤 |
|
摩耗防止剤 |
|
極圧剤 |
|
耐荷重添加剤は、部品の摩耗や焼き付きを防ぐといった、潤滑油本来の役割・機能を底上げするために添加されるのが特徴です。
種類②:清浄分散剤
清浄分散剤は潤滑油の不純物を取り除き、機械の寿命を伸ばすための添加剤です。
なお、清浄分散剤はおもに、以下の2種類に分類されます。
清浄分散剤の種類 | おもな機能 |
清浄剤 |
|
分散剤 |
|
清浄分散剤は、おもにエンジンなどの高温下で使用される潤滑油に添加されます。
高温下では、摩擦によって発生した金属粉が蓄積し、スラッジやすすといった不純物が発生しやすいです。
スラッジが潤滑面に付着していると摩耗が進みます。
また、潤滑油に混入すると酸化・劣化の原因になるため、結果的に機械の故障・焼き付きが発生します。
そのような不純物による悪影響を防ぐために、配合されるのが清浄分散剤です。
なお、スラッジ問題でお困りの方は、自浄作用の高いJAX製品の活用がおすすめです。
スラッジや自浄作用の詳細については、下記の動画で解説していますので合わせてご確認ください。
種類③:酸化防止剤
酸化防止剤は潤滑油の酸化・劣化を防ぐための潤滑剤です。
潤滑油が酸化すると、スラッジが発生しやすくなります。
なお、潤滑油の酸化は高温下や金属の触媒作用など、さまざまな要因で発生します。
また、使用時以外にも保管中に酸化が進行するケースもあるため、添加剤のなかでも比較的多用されているのが特徴です。
種類④:粘度指数向上剤
粘度指数向上剤は、温度変化による潤滑油の粘度変化を低減する役割を持っています。
おもに、エンジンオイルに使用され、潤滑油の粘度が高くなりやすい起動直後の運転を効率化できるのが特徴です。
特に、低温環境下では潤滑油の粘度が上昇するため、エンジンの立ち上がりが悪くなります。
粘度指数向上剤を添加することで、粘度の上昇を低減できるため、燃費向上やオイルの消費量を削減できます。
なお、潤滑油の粘度や選定方法について、詳しく知りたい方は下記の記事も合わせてご確認ください。
【関連記事】潤滑油の粘度とは?これを知れば、適切な潤滑油の選定ができます!
種類⑤:流動点降下剤
流動点降下剤は、潤滑油として使用可能な温度範囲を低温側に拡大するための添加剤です。
パラフィンが含まれている潤滑油の場合、低温下で結晶化するため、流動性が失われます。
その結果、潤滑性能も損なわれてしまうため、低温下でもパラフィン系オイルを使用できるように流動点降下剤が添加されます。
種類⑥:腐食防止剤
腐食防止剤は鉄以外の金属の錆=腐食を防ぐための添加剤です。
金属の表面に保護膜を形成し、腐食を発生させる原因となる酸素や水分の接触を防ぎます。
また、腐食の原因となる潤滑油の酸性物質を中和する作用も持っています。
種類⑦:錆び止め剤
錆び止め剤は鉄の錆を防ぐための添加剤です。
基本的には、腐食防止剤と同じ原理で錆の発生を抑制します。
また、保護膜を作るという作用は、耐荷重添加剤も有しているため、両方の機能を掛け合わせたものもあるようです。
種類⑧:抗乳化剤
抗乳化剤は潤滑油の乳化を防ぐための添加剤です。
潤滑油に水分が混入してしまうと、エマルション※が形成され、乳化がおきます。
潤滑剤が乳化すると正常な潤滑性能を発揮できないため、機械部品の摩耗や故障の原因となります。
乳化による悪影響を防ぐため、エマルションを破壊し、潤滑剤の劣化を防ぐのが抗乳化剤の役割です。
※水の中に油が、または油の中に水が分散している状態の液体。「乳濁液(にゅうだくえき)」や「乳剤(にゅうざい)」ともいう。
種類⑨:消泡剤
消泡剤は潤滑油の泡立ちを防ぐための添加剤です。
潤滑油が激しく撹拌されたり、不純物が混入すると泡立ちが発生しやすくなります。
潤滑油の泡立ちが激しいと、空気との接点が増えるため、潤滑油の酸化が進みやすくなります。
このような潤滑油の劣化を防ぐために、泡の発生を抑えたり、泡をしたりする役割を担うのが消泡剤です。
【種類別】潤滑油添加剤の成分一覧表
潤滑油添加剤の成分と添加量を種類別にまとめました。
潤滑油に含まれる成分や含有量を確認したい方は参考にしてください。
潤滑油添加剤の種類 | 成分・化合物 | 添加量 | |
耐荷重添加剤 | 油性剤 |
|
0.1~1% |
耐摩耗剤 |
|
5~10% | |
極圧剤 |
|
||
清浄分散剤 | 清浄剤 |
|
2~10% |
分散剤 |
|
||
酸化防止剤 |
|
0.1~1% | |
粘度指数向上剤 |
|
2~10% | |
流動点降下剤 |
|
0.1~0.5wt% | |
腐食防止剤 |
|
0.4~2% | |
錆び止め剤 |
|
0.1~1% | |
抗乳化剤 |
|
~3% | |
消泡剤 |
|
1~100ppm |
【種類別】潤滑油添加剤の用途・役割一覧表
潤滑油添加剤の用途・役割を種類別にまとめました。
自社の用途・目的にあった機能を持つ潤滑油の選定にご活用ください。
潤滑油添加剤の種類 | 用途・役割 | |
耐荷重添加剤 | 油性剤 | 荷重が低い摩擦箇所を油膜でコーティングし、摩擦・摩耗を軽減する |
耐摩耗剤 | 摩擦箇所に保護膜を作り、摩耗を防ぐ | |
極圧剤 | 接触圧力の高い摩擦箇所において、焼き付きや部品の損傷を防ぐ | |
清浄分散剤 | 清浄剤 | 高温下で発生する沈積物やスラッジを取り除き、清浄化する |
分散剤 | 高温下で発生する沈積物やスラッジをオイル中に分散する | |
酸化防止剤 | 潤滑油の酸化を防ぎ、劣化・スラッジの発生を抑制する | |
粘度指数向上剤 | 温度変化による粘度の上昇・低下を軽減する | |
流動点降下剤 | 低温下におけるパラフィンの結晶化を防ぎ、潤滑油の適用温度範囲を拡大する | |
腐食防止剤 | 金属面に防食皮膜の生成と腐食性酸化生成物の中和 | |
錆び止め剤 | 表面に保護膜を作り、金属製品における錆発生を一時的に防止する | |
抗乳化剤 | エマルションを破壊し、潤滑油の乳化を防ぐ | |
消泡剤 | 潤滑油の泡立ちを防ぎ、発生した泡を破壊する |
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