NSF H2オイルとは?食品機械用(食品グレード)潤滑油の規格と使用する3つのメリット
金属同士の摩擦を防ぐうえで欠かせない「潤滑油」。様々な機械の保全目的に使用され、食品機械に使用されるケースもあります。
潤滑油には様々な種類のものがありますが、食品機械では「NSF認証の潤滑油」を使用するのがおすすめです。
この記事では、NSF認証の潤滑油の中でもH2規格を満たした「NSF H2オイル」について、概要や使用するメリット、注意点を解説します。
H2以外の規格についても紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
NSF H2オイルとは
NSF H2オイルとは、国際的な第三者機関「NSF」が制定した規格のうち、「H2規格」を満たした食品機械用潤滑油のことです。
工場などでは一般的に機械を使用するため、機械を保全する目的で潤滑油が使われるケースも少なくありません。
しかし、食品工場の場合は機械が食品と接触する可能性があるため、使用する潤滑油もより安全性の高いものが求められます。
このような食品機械向けに推奨される潤滑油が、「NSF認証の潤滑油」です。
NSF認証の潤滑油は国際的に安全性が認められており、高い評価と信頼性を誇っています。
NSF H2オイルはこのNSF認証の中でもH2規格を満たしたもので、食品と接触する可能性のないところで使用できる食品機械用潤滑油の1つです。
【関連記事】食品機械用潤滑油とは?重要性や求められる品質を徹底解説
H2オイルの認証を行う「NSF」とは
NSF(National Sanitation Foundation)は、アメリカのミシガン州に本拠地を置く、国際的に認められた非営利第三者機関です。
1944年にミシガン大学の公衆衛生学部に設置された機関で、現在では世界保健機関(WHO)の食品衛生協力センターとしても機能しています。
主に公衆安全衛生に関する事業を行っており、公衆衛生と安全に関わる基準の制定や、基準をもとにした製品の認定・登録作業など、様々な活動に取り組んでいます。
食品機械用潤滑油の安全規格を規定した「NSFガイドライン」の制定もその一環であり、その中に定められた規格の1つが「H2規格」です。
▼NSFについて分かりやすく知りたい方はこちらの動画もご覧ください。
NSFガイドラインにおけるH2規格の定義
NSFガイドラインにおいて、H2規格は「食品との接触が起こり得ない箇所で使用できる潤滑剤」と定義されています。
つまり、食品製造機械における潤滑部位のなかでも、食品と接触する可能性がない場所で使用できる潤滑剤というわけです。
H2規格の潤滑剤に関しては、原材料について特定のリストなどはありません。
そのため、工業用に使用が認められている成分であれば、そのほとんどが使用可能となっています。
ただし、毒性が強く人体に危害を与える可能性のある原料や、異臭のある原料については使用が認められていません。
※人体に危害を与える可能性のある原料として、ヒ素やカドミウムなどの有毒な重金属、発がん性物質、突然変異誘発物質などが挙げられます。
H2以外の食品機械用潤滑油の規格
食品機械用潤滑油の規格には、H2以外に以下のような規格があります。
- H1
- H3
- HT1
- HT2
- 3H
それぞれの規格の詳細については以下の通りです。
規格①:H1
H1規格は「食品との偶発的な接触が起こり得る箇所で使用できる潤滑剤」です。
米国食品医薬局(FDA)によって認可された原料が原材料に使われており、安全性の高さが証明されています。
そのため、前提として食品との接触は避けるべきですが、混入しても安全性が担保されています。
規格②:H3
H3規格は「食肉を吊るすフックの錆防止等に使用される潤滑剤」です。
コーン油や綿実油、大豆油などの食用油や、FDAによりGRAS認証を付与された物質などが原材料として使用されます。
安全性は高いものの、食品に接触する前提で使用されているわけではないため、食品に接触する場合には事前に洗浄しておくか、拭き取っておく必要があります。
規格③:HT1
HT1規格は「食品との偶発的な接触が起こり得る箇所で使用できる熱媒体油」です。
基本的には食品との接触は避けるべきですが、FDAに認可された原材料が使用されているため、万が一接触しても安全性が担保されています。
規格④:HT2
HT2規格は「食品との接触が起こり得ない箇所で使用できる熱媒体油」です。
食品との接触は必ず避ける必要がありますが、万が一に備えて人体への毒性が強い原材料の使用は禁止されています。
規格⑤:3H
3H規格は「直接食品に接触する目的で使用される潤滑剤」です。
グリルやフライパンなどの焦げ付き防止目的で使用される植物油や、食品の付着を防ぐ離型剤などが該当します。
NSF H2オイルを含む食品機械用潤滑油を使用するメリット3選
NSF H2オイルを始め、NSF認証の食品機械用潤滑油を使用することには、以下の3つのメリットがあります。
- 食品製造工場における潤滑油混入リスクを軽減できる
- 消費者に自社製品の安全性をアピールできる
- 海外への販路拡大にもつながる
それぞれのメリットについて詳しく解説します。
メリット①:食品製造工場における潤滑油混入リスクを軽減できる
NSF認証の潤滑油を使用すると、食品製造工場における食品混入に伴うリスクを減らせます。
一般的な潤滑剤の場合は、食品混入時の安全性が証明されておらず、万が一混入した際に安全面が懸念されることも少なくありません。
その点、NSF認証の潤滑油は国際的に安全性が証明されているので、食品混入に伴うリスクを大きく軽減できます。
メリット②:消費者に自社製品の安全性をアピールできる
NSF認証の潤滑油を使用することは、自社製品の安全性のアピールにもつながります。
NSFは国際的に認められた第三者機関であり、業界や団体などには属していません。
独立した透明性の高い機関が認証した製品であるからこそ、NSF認証の潤滑油を使用することで自社製品の安全性を担保できるのです。
メリット③:海外への販路拡大にもつながる
NSF認証の潤滑油を使用することは、海外への販路拡大にもつながります。
NSF認証は海外での実施成績も多く、国際的に知名度の高い認証制度として有名です。
そのため、NSF認証された潤滑油を使用することは、海外に向けて安全性の高さをアピールすることにもなり、海外への販路拡大の有効な手段になり得ます。
NSF H2オイルを使用する際の注意点
NSF H2オイルを使用する際には、前提として「HACCP」をおさえておくことが大切です。
HACCPとは、食品衛生の安全性を確保するための衛生管理手法で、潤滑剤に対しては以下のような優先順位が考えられています。
- 潤滑剤を使用しない
- 潤滑剤が漏れない・触れない対策をする
- 偶発的接触が認められた潤滑剤を使用する
「順位1.」に関しては、機械のメンテナンスやコスト、保全などの観点から、現状ではあまり現実的であるとは言えません。
「順位2.」については現状でしっかりと実施できる内容であるため、NSF H2オイルを使用する際にはこの点を遵守することが大切です。
具体的には、以下のポイントを意識しておくと良いでしょう。
- 機械の日常管理を徹底する
- 適切な潤滑剤を選定する
- 潤滑剤の使用箇所ごとに対策を徹底する
「順位3.」も実施可能な内容と言えるため、食品との偶発的な接触が起こり得る箇所についてはNSF H2オイルの使用は避け、H1規格の潤滑剤を使用しましょう。
なお、「JAX JAPAN」では、安全性と高品質を両立したNSF H1規格の食品機械用潤滑油を提供しています。
耐熱・耐水性の高い「H1チェーンオイル」や「H1グリース」など、用途に合わせた製品ラインナップを取り揃えておりますので、ぜひ詳細をご確認ください。
【関連記事】食品の衛生・安全を守るHACCPとはどんな制度?義務化の時期や手順を解説
自社製品の安全性向上につながるNSF H2オイルをお探しなら
自社製品の安全性向上につながる潤滑油をお探しであれば、「JAX JAPAN」が提供するNSF H2オイルをご検討ください。
NSF H2オイルはNSF H2規格を取得している食品機械用潤滑油なので、食品に接触する可能性がなければ食品機械にも安全に使用できます。
NSF H2オイルを含め、安全性と信頼性を兼ね備えた食品機械用潤滑油をお探しの方は、お気軽に「JAX JAPAN」までお問い合わせください。
【関連記事】世界標準の信頼性をもつNSFとは?NSF認証の取得プロセスやメリットを紹介