潤滑剤の種類とは?液体・半固体・固体の種類別に特徴と用途を解説
潤滑剤は、機械をスムーズに動作させるために重要な働きを担っています。
潤滑剤が形成した油膜が金属同士の摩耗や、熱による劣化を防ぐことで、安全かつ効率的な作業と機械の長寿命化をサポートしているのです。
しかし、潤滑剤には数多くの種類が存在しており、それぞれ特徴や性能が異なるため、使用用途や機械に応じて適切に選ぶことが大切です。
この記事では、潤滑剤の種類とそれぞれの特徴や用途を解説します。
種類別に具体的な潤滑剤もご紹介しますので、自社の環境や用途に適した製品を選ぶ際の参考にしてください。
潤滑剤の種類とおもな用途
潤滑剤は形状によって、おもに以下の3種類に分類されます。
- 液体潤滑剤
- 半固体潤滑剤
- 固体潤滑剤
自社機械に最適な潤滑剤を見極めるためにも、まずは種類別の特徴や違いを把握しましょう。
種類①:液体潤滑剤(潤滑油)
液体潤滑剤は、油の状態になっている潤滑油です。
おもに工作機械用のチェーンオイルやギア油、自動車用のエンジンオイルなどが該当します。
液体潤滑剤は浸透性が高いため、狭いスペースなどにも入り込んで油膜を形成できるのが特徴です。
基本的には、機械部品の摺動部(しゅうどうぶ)などに直接塗布し、滑らかな動きを助けたり、摩擦や発熱を抑えたりする重要な役割を担っています。
ほかにも、さまざまな種類の潤滑油が存在しており、用途や潤滑箇所によって使い分けるのが一般的です。
種類②:半固体潤滑剤
半固体潤滑剤は、グリースのようなペースト状やろう状をしている潤滑剤です。
固形でありながら一定の粘性を持っているため、油垂れや液漏れなどが気になる場合に使用されます。
また、半固体潤滑剤は粘度が高い分、液体潤滑剤よりも長期にわたって効果を発揮するのが特徴です。
ただし、潤滑油と比較して浸透性は低いため、機械部品の組み立て時にあらかじめ塗布・注入するケースもあります。
なお、半固体潤滑剤は、おもに以下のような箇所で使用されるのが一般的です。
- 工場の機械装置
- 自動車のプロペラシャフトや各種軸受け
- ロボットの関節部分
上記のように、持続的な潤滑が必要な箇所に使用されるケースが多い潤滑剤といえるでしょう。
種類③:固体潤滑剤
固体潤滑剤は、固形の微粒子や薄膜からなる潤滑剤です。
塗布した箇所に固形の油膜を形成し、摩耗に対する耐久性や耐熱性に優れています。
そのうえ、飛び散りや漏れが少ないため、液体や半固体の潤滑剤を使用できない箇所に使われるのが一般的です。
なお、固体潤滑剤には、以下のような種類が存在します。
- 粉末状
- 繊維状
- 薄膜状
また、原料が無機物か有機物によっても種類が分かれます。
無機物の固体潤滑剤には、おもに硫化モリブデン、グラファイト、有機物は、PTFE(テフロン)が使用されるのが一般的です。
さらに、固体潤滑剤は極低温状態や極高温状態、真空状態といった特殊環境下でも安定した潤滑効果を発揮できるという特徴もあります。
そのため、宇宙機器や特殊産業用ロボットなどの分野で活用されています。
液体潤滑剤のおもな種類と特徴
液体潤滑剤(潤滑油)のおもな種類として、以下の4点を紹介します。
- チェーンオイル
- 油圧作動油
- ギヤ油
- コンプレッサー油
それぞれの特徴や性質を正しく理解して、自社に適した潤滑油を選定しましょう。
種類①:チェーンオイル
チェーンオイルは、チェーンを円滑に動作させる潤滑剤です。
おもに、工業機械や自動車、バイクなどの駆動部に使用されているチェーンに塗布します。
チェーンオイルには、チェーンと歯車(スプロケット)の間に油膜を形成し、摩擦や熱から守る働きがあります。
そのため、チェーンオイルを選定する際は、摩擦によって生じる発熱や長期間使用の使用による劣化現象への耐性を重視しなければなりません。
また、水や湿気といった外部環境からチェーンを保護する水分への耐性も選定時に考慮すべきポイントです。
なお、JAX JAPANでは、耐摩耗性や酸化安定性はもちろん、耐熱性や耐水性にも優れたチェーンオイルを取り扱っています。
過酷な環境でも高い潤滑性能を維持できるチェーンオイルをお探しの方は、以下の製品ラインナップをご確認ください。
【関連記事】チェーンオイルの必要性とは?おもな役割と代表的な種類・特徴を解説
種類②:油圧作動油
油圧作動油は、油圧回路で使用される潤滑剤です。
具体的には、油圧ショベルやブルドーザーなどの建設機械やプレス機といった工業機械に使用されます。
油圧動作油の特徴は、高粘度でありながらも広い温度範囲でその性能を維持できる点です。
また、機械の摩擦面を錆から保護する防錆性能と、油自体が酸化しにくい性質を持っている傾向があります。
これらの特性により、油圧機械のメンテナンスにかかる負担を軽減し、長期間の稼働をサポートしているのです。
なお、JAX JAPANでは、耐摩耗や抗乳化はもちろん、さまざまな環境、用途で使用可能な高品質の油圧作動油を提供しています。
]
高い耐熱性や耐水性はもちろん、低温でも優れた潤滑性能を発揮する油圧作動油をお探しの方は、以下の製品ページをご確認ください。
【関連記事】油圧作動油とは?おもな種類や粘度の違いを解説
種類③:ギヤ油
ギヤ油は、自動車や産業用機器のギヤボックス内で使用される潤滑剤です。
高負荷下での歯車の円滑な動作を支えるために、ギヤ油には極圧添加剤が含まれている傾向があります。
また、高速回転するギヤや歯車は高温になりやすいため、温度変化に対する粘度特性や耐熱性に優れた製品も多いのが特徴です。
上記のような特徴から、さまざまな動作条件下でも歯車が円滑に動作できるようにサポートしています。
なお、JAX JAPANでは、耐熱性や耐摩耗性に優れたギヤ油を取り扱っています。
高強度の油膜によって、自社機械の長寿命化を実現できるギヤ油をお探しの方は、以下の製品ページをご確認ください。
【関連記事】ギヤ油とは?JIS規格1種と2種の違いや粘度別の種類をプロが解説
種類④:コンプレッサー油
コンプレッサー油は、空気圧縮機であるコンプレッサーに使用される潤滑剤です。
コンプレッサー油は、コンプレッサーの部品同士の摩擦を抑え、円滑な運転をサポートしています。
また、金属部品の摩擦を防ぐことで、発生する熱を逃す冷却作用を発揮するのも特徴です。
さらに、コンプレッサー油は動力効率を上昇させるために、空気が機器の隙間から抜け出るのを防ぐ役割も担っています。
JAX JAPANでは、耐熱性能やシール効果の高いコンプレッサー油も提供しています。
潤滑性能とコストパフォーマンスが高いコンプレッサー油をお探しの方は、以下の製品ページをご確認ください。
【関連記事】コンプレッサーオイルとは?粘度別の種類や交換の目安・適正量を解説
半固体潤滑剤のおもな種類と特徴
半固体潤滑剤は、おもにグリースとコンパウンドの2種類に分かれます。
それぞれの特徴や使用シーンなどを確認しておきましょう。
種類①:グリース
グリースは、基油(ベースオイル)に増ちょう剤や添加剤を加えた潤滑剤です。
リチウム系やカルシウム系などの金属石けんや、有機化合物もしくは無機化合物が原料となる増ちょう剤を基油に加えることで、粘度(ちょう度)を高めています。
半固体のグリースは、潤滑油と比較して扱いやすく、潤滑効果を長期間持続できる点がメリットです。
なお、JAX JAPANでは、温度や湿度の高い環境でも潤滑性を保てる高性能グリースを取り扱っております。
厳しい環境下でも機械安定性を保持できる高性能なグリースをお探しの方は、以下の製品ラインナップをご確認ください。
【関連記事】グリースとは?潤滑油との違いや求められる5つの性能、種類を徹底解説
種類②:コンパウンド
コンパウンドは、固形潤滑剤にオイルを混合した潤滑剤です。
製品にもよりますが、グリースよりも粘度が高い傾向があり、潤滑油では保持できない垂直面や天井面などでの使用に適しています。
また、コンパウンドは屋外の大気環境下でも耐久性に優れており、耐水性や防錆性も高いのが特徴です。
そのため、オープンギヤやワイヤロープの潤滑など、屋外で使用されるケースもあります。
固体潤滑剤のおもな種類と特徴
固体潤滑剤のおもな種類は、以下の通りです。
- 二酸化モリブデン
- グラファイト
- PTFE
各固体潤滑剤の特徴や違いを紹介するので、ぜひ製品選びの参考にしてください。
種類①:二硫化モリブデン
二硫化モリブデンは、黒色の粉末状になっている潤滑剤であり、モリブデンジスルフィドとも呼ばれます。
二硫化モリブデンは層状の構造を持ち、その間に滑らかな潤滑被膜の形成が可能です。
この特性により、摩擦を大幅に減少させられるため、優れた耐熱性と耐摩耗性を発揮します。
また、二硫化モリブデンは大気中であれば約400°C以下程度、真空状態では約900℃程度まで、潤滑効果を維持することが可能です。
そのため、航空宇宙や精密機器などの分野で広く利用されています。
種類②:グラファイト
グラファイトは、黒鉛を原料とした粉末や薄膜状の潤滑剤です。
層状の結晶構造を有しており、非常に滑らかな表面を形成します。
この特性がグラファイトの潤滑性能を高め、重荷重や高温状態でも性能を保持しているのです。
さらに、グラファイトは高い熱伝導性と優れた耐酸化性を持っており、さまざまな用途や環境で使用できる傾向があります。
種類③:PTFE
PTFE(テフロン)は高分子材料であり、耐熱性と非粘着性に優れる潤滑剤です。
一般的に、固体潤滑剤としてのPTFEは、粉末や薄膜の形態で使用されます。
金属に対してほとんど磨耗しない性質を持つ「自己潤滑性材料」であり、低温から高温環境に至るまで、長期間にわたって潤滑効果を保つことが可能です。
また、PTFEを溶融処理して繊維状にしたものも潤滑剤として使われ始めており、より幅広い用途での使用が期待されています。
自社の用途・環境に適した種類の潤滑剤をお探しなら
潤滑剤は状態や粘度により、種類が分かれ、それぞれ特徴や性質も異なります。
そのため、それぞれの潤滑剤の特性を正しく把握したうえで、自社の環境や用途にあった製品を選ぶことが大切です。
例えば、食品工場では、食品機械に使用する潤滑剤にも安全性が求められます。
世界的に食品の安全性への意識が高まりつつある近年では、潤滑剤が製品に混入し、リコール問題に発展するケースも少なくありません。
とはいえ、異物混入を100%防ぐのは非常に困難であるため、万が一、潤滑油が混入しても人体に影響のない製品を選ぶことが重要です。
JAX JAPANでは、衛生管理手法のHACCPの基準を満たすH1規格の潤滑剤を提供しております。
また、安全性だけでなく、耐摩耗性や耐熱・耐水性能の高い各種潤滑剤を取り揃えているラインナップの幅広さも特徴です。
自社にとって最適な潤滑油を知りたい方は、お気軽にJAX JAPANまでご相談ください。
【関連記事】潤滑油の正しい使い方とは?最適なオイルの選び方や給油方法について解説
【関連記事】食品機械に最適な潤滑油の選び方とは?種類と用途、規格について解説
【関連記事】潤滑油の種類と特徴|機械に最適な選択肢を見つけるポイントも解説